https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=28746308
Nature. 2017 Aug 10;548(7666):224-227. doi: 10.1038/nature23286. Epub 2017 Jul 26.
Derivation of ground-state female ES cells maintaining gamete-derived DNA methylation.
Yagi M, Kishigami S, Tanaka A, Semi K, Mizutani E, Wakayama S, Wakayama T, Yamamoto T, Yamada Y.

上記の論文は、2017年と昨年のネイチャー誌に掲載されたものですが、若山研究室が共同研究者になっています。
共同研究において、研究者同志はお互いを尊敬、信頼し合い、固い結束で結ばれています。
それが破綻すると、STAP事件のように大変な不幸なことが起きるのです。

この論文の学術的な面に目をむけてみると、雌のES細胞は、配偶子(卵子、精子)由来のDNAメチル化について書かれています。

ES細胞とは、自然に存在すると考えている人もいるかもしれませんが、実は、ES細胞とはとても人工的な細胞で、そのままにしていたら変化していってしまうものを、人工的な工夫を培地に施すことにより、分化能を維持したまま増殖能を維持して生かしている細胞なのです。
繊細な繊細で、細胞固有のばらつきがあり、一般的にも、細胞を扱う実験は再現性が困難でしょう。

学とみ子は、STAP細胞もとても不安定なゲノムの緩んだ状態の細胞だったのではないかの仮説をたてています。

少し、論文をのぞいてみましょう。
Mek1 / 2およびGsk3βの分化阻害剤は、胚性幹(ES)細胞培養において、分化維持能や多能性を保つ。2iおよび白血病抑制因子(2i / L ES細胞)の存在下での雌マウスES細胞を維持すると、ゲノムインプリント領域の消去を含み、DNAメチル化が大規模に消去される。

2i / L ES細胞において、DNAメチル化の大規模消去が維持されているが、この2i / L ES細胞が体細胞へと分化していく初期段階において、ゲノム全体のデノボDNAメチル化が必要となる。

しかし、2i / L-ES細胞由来の分化細胞において、インプリンティング領域(ICR)の大部分は、メチル化されないままになってしまう。そのため、四倍体胚の補完法や核移植を用いた時に、2i / L ES細胞は、その後に、自律的胚形成や胎盤形成の進行過程で障害が出てくる。

雌性ES細胞は、2i / L-ES細胞の転写様式を示し、そのゲノムはDNAメチル化を規定し、分化増殖の潜在力を維持させる。しかし、培養期間が長くなると、雌性ES細胞は培養条件にかかわらずICR部位の脱メチル化を示した。

受精卵が子宮に着床する前の時点で、ES研究を通じて、受精卵のエピゲノムの変化の様相を観察する研究でしょうか?ES細胞の機能の限界を確認しながら、臨床応用を考慮していく必要性を感じさせます。

インプリンティングとは、ゲノムの刷り込みと訳されますが、特定の遺伝子においては、必ず父か母から来ることが決まっています。以下がウィキペディアの説明です。

インプリンティングと疾患との関係について、ウィキペディアで説明されています。

ゲノム刷り込みまたはゲノムインプリンティング (英語: en:genomic imprinting,稀にgenetic imprinting)は、遺伝子発現の制御の方法の一つである。一般に哺乳類は父親と母親から同じ遺伝子を二つ(性染色体の場合は一つ)受け継ぐが、いくつかの遺伝子については片方の親から受け継いだ遺伝子のみが発現することが知られている。 このように遺伝子が両親のどちらからもらったか覚えていることをゲノム刷り込みという。

一方の親から受け継いだ遺伝子だけが選択的に発現することは、利用できる遺伝子が一つしかないため受け継いだ遺伝子に欠陥があった場合にそのバックアップがなく、流産または遺伝子疾患になってしまうことがある。 よく知られた例がPrader-Willi症候群であり、15番染色体にある遺伝子(セロトニン受容体かその近傍の遺伝子と考えられる)が父親由来の遺伝子のみが選択的に発現するため、父親の遺伝子に欠陥があった場合に(母親が正常な遺伝子をもっていても)、正常な個体発生ができなくなり、精神遅滞や生殖器の発生異常等の障害をもって産まれる。