上の尾関氏講演の動画を見ての短い感想を、前回記事のコメント欄に追加しましたが(青字)、今日は、更なる追加で、私の感想を若干書いてみようと思いました。
サイエンスカフェと名付けられた啓発活動の催しで、関氏や尾関氏によりSTAP細胞が語られていました。

この動画の後に、たまたま続いてできた動画では、元朝日新聞記者の講演があり、その中で、こんな話がありました。講師の尾関 章氏は、知人の中に、京都大学の生命倫理の学者がいるそうで、この専門家はSTAP現象はあると言っているとのことです。しかし、尾関氏は無いといっています。なぜ、尾関氏は専門家の意見を尊重できないのでしょうか?
これがマスコミの実態ですね。若いエリート女性のねつ造事件は、世の興味をひくということなんだなあ~とのため息ものでした。ため息先生とは関係ないですけど・・・。引用おわり

尾関氏について上のような評価をしてしまっていますが、実は書きすぎでした。すみません。
マスコミは皆、ESねつ造派か?という先入観も災いしました。

尾関氏は専門外ということもあるようで、実は、あまりSTAP細胞の実験内容には触れていません。無いとは思う立場だが、あるかもしれないとの言い方です。

むしろ、STAP細胞については、一般人が持ちやすい素朴な疑問を語っています。
こちらの方が、学とみ子には興味深いものでした。

ベテラン記者である尾関氏でさえ、STAP細胞は偽物っぽい!との漠然とした第一印象を持ったようです、

あの大々的なSTAP細胞の記者発表の時には、すでに尾関氏は記者を引退していました。
一般人の立場で、同僚が書いた新聞発表を見たようです。

うら若き女性がノーベル賞級の発見をしたということがすごい事だとは思ったが、なぜかさめていて、心躍ると言うことは無かったと、尾関氏は語ってします。
そして、尾関氏が自ら感じたこの空虚感は何なのだろうかと自問自答したそうです。

尾関氏は、理由をいくつかあげていたのですが、本当の話でないような印象があったとのことでした。彼は、本当の話ではないと言っているのではありません。そこが遠藤氏の言い回し(あり得ないと表現)とは違っています。

“何百年にもわたる細胞生物学の歴史を愚弄する”との表現は、論文発表時に新聞にも載った位、有名になりました。

画期的との言葉が強調されすぎて、かえって尾関氏の心がマイナス方向へと進んでしまったのです。

理研や笹井先生が使った画期的を強調した説明が、逆に、信じがたいこととして、記者たちに伝わった部分もあったのかなあ~?

紅茶と同じ位の弱酸性の溶液につけるだけで、細胞が初期化して増殖を始める?!
本当なのか?
酸性雨だってその位だろう?
酸性雨にあたったら、そこの皮膚から何か出来物ができるというのか?

植物では、接ぎ木や挿し木で葉や茎などの組織が再生するけど、動物の細胞は厳密にそこはコントロールされているはずじゃあなかったのではないか?
といった疑問だったとのことです。

朝日新聞は、“刺激で細胞が初期化する”との見出しを載せたのですが、 “刺激だけ”の部分が強調され、ええっ!“刺激”で細胞が受精卵のようになっちゃうの?との嘘っぽいイメージが第一印象にあったようでした。

生物系の人間にとっては、細胞を紅茶に付けるとのイメージは無いし、酸性以前に浸透圧でダメになってしまうと考えます。よっぽど、気をつけないとすぐ死んじゃうと考えます。

まして、人の体は緩衝液や、腎機能、呼吸機能、代謝機能など多くの生体反応で、厳密に酸性度がコントロールされています。酸素供給の途絶えた体内では、生体を維持しているエネルギーがすぐ枯渇して、細胞を生かすための電池切れが起きます
人工的に細胞を培養するときにも、培地の酸性度は厳密に保たれています。
生物系の人間なら、酸浴が危険がことはすぐわかります。

STAP細胞実験での酸浴条件でも、設定が難しいです。
プロトコールエクスチェンジではこのあたりも多くに触れていて、STAPアーテクル論文Extended Fig1では、aからhまで、19個の図表を載せて議論されています。
PH 4から6.8までの条件で、Octの発現がどのように変化していくかが記載されていますし、酸浴後0日、3日、7日と経過を追って、GFP+のCD45―へと変化した細胞がどのような割合で増えてくるのかの詳細結果が、酸浴有無の条件別で載っています。
ここらあたりは、小保方オリジナルな実験結果でしょうね。想像するに、手早い作業が必要ですし、全体としては手間暇かける実験ではないでしょうか?

そして、尾関氏は次のようにも言っています。
記者発表では、簡単な刺激と言いながら、実際の論文を見てみたら、Discussionには、“それまで細胞が経験したことのないような強い刺激にさらされると多能性の細胞になる”と書いてあるじゃあないか?と言っています。
つまりこの強い刺激との記載部分と、新聞発表のギャップに疑問を感じたと言います。

裸の状態の細胞が生き延びるには、それなりに厳密な培養条件管理が必要であることから考えると、上記の赤字文章は生物系の人間なら、何の問題も無いと思うのですが、なじみの無い人にとっては、こうした些細な記載が、その後の大きな誤解につながることがわかりました。

予想できないところで、人びと(彼らは記者だけど・・・)の誤解を招くようなことがあったのです。騒動が起きた時、笹井氏や小保方氏が、人びとの誤解の質にアプローチできたら、解説内容も変わったかもしれません。

記者会見では、記者たちの消化不良な専門質問が飛びかい、基礎から掘り起こした解説的なSTAP細胞のしくみに関する質疑応答がありませんでした。
ES派学者の熱心なマスコミむけ広報活動が成果をあげ、人びとの誤解が募る状況だけが重なっていったようでした。
STAP細胞の数回の記者会見で、強い口調で批判する記者たちの質問内容を聞いていると、ES派の学者たちから吹き込まれた情報そのままという印象を持ちます。
強い調子で追及する記者の姿は、ねつ造を暴こうと頑張っている人たち(つまりねつ造は本物)のように思えるとの印象を、一般の人々に与えたのか知れません。

今後の話になりますが、こうした一般人の誤解を前にすると、小保方氏が直接DVDで解説をするなどの企画もありと感じました。誤解解消に役立つのではないでしょうか?
小保方氏がDVDに登場すれば、まさに真打の登場です。

彼女自身でDVDのナレーションをして、細胞の柔軟性について図表を示して語りながら、混入などをしたら、この成績は出す事ができませんと解説や啓発をすればよいでしょう。
今の世の中、”うんこ漢字ドリル”だって、教育ツールになっています。

実は、尾関氏はSTAP細胞の真偽についてはあまり触れていないのです。

むしろ、尾関氏が気にしていることは、文科省のガイドラインに権力的締め付け要素が感じられるとの解釈でした。
つまり、理研への官僚的支配を懸念しているようでした。
“国益”に沿った研究環境のあり方と言ったような表現に、彼は抵抗を示していました。

朝日新聞は、国家的権力に対して常に批判的スタンスですし、そこで育った尾関氏は、権力組織が科学研究所を管理する体制を懸念しており、むしろ、そこが講演の主軸となっていたようです。

文科省のガイドラインの最後の部分の結語は、朝永博士の言葉を引用して、“理研は研究者の楽園”として充実した研究組織であることに努めたいと結んであるようです。
(当方では、内容の確認はしていませんが)

文科省のガイドラインの最後に、知的活動の格調を感じさせる部分があることから、尾関氏は、結語を書いた人は、本文を書いた人とは違うでしょうと言っていました。
記者であれば、政治的資料は、どの部分は誰が書いたとかがわかるからですね。

尾関氏の主眼は、STAP細胞の真偽より、理研の管理体制の在り方でした。
これはこれで大事なことであるとは思います。

机上の空論のようなガイドラインより、“理研は研究者の楽園”であるためには、STAP事件のフェアな裁きは必須でしょう。