BPOが人権侵害を認めた時、NHKは反発しました。
STAP番組は、科学的根拠に基づいて慎重に作成されたものであるとのNHKの主張です。

番組内容の質の向上と信頼性維持のため、マスコミ関係者が、自らに課した規制であるはずのBPO設立の理念を損なうようなNHKの自己矛盾的発言でした。

ここは、問題点ではあると言え、一歩、又、別の視点でみると、STAP問題の特異点を象徴しているとも言えます。一言でいえば、多くの異なる立場の人が騙され、利用されたのが、STAP事件の構図だったでしょう。

テレビのバラエティー番組などで、どうでもよいようなタレントのゴシップ記事を扱うことは、マスコミにとってはやさしい分野でしょう。スクープ記事をすっぱ抜かれたタレントにとっては、一大事ではありましょうが、社会的には影響は少ないものです。

一方、政治問題や外国問題では、マスコミが一歩間違えれば、マスコミ社の存続にかかわるような事件に発展するリスクがあります。スクープ記事をつくることは、大変な裏付けが必要でしょう。

マスコミにとっては、質の良いスクープ記事をつくることは、マスコミ冥利につきることであり、マスコミのメンツにかけて、頑張りがいのあるところです。
どこのマスコミでも、社をあげてスクープ記事にがんばるであろうと思います。

そうした意味で、NHK番組「STAP事件の深層」は、NHKにとって誇るべき番組を作れたという自負があったのでしょう。
そうそうたる大学教授たちがNHKの主催の座談会に参加してくれて、STAPねつ造について語ってくれました。
さらに、理研は、番組作成につき全面的に協力体制をとってくれました。

事実が積み重ねられ、ねつ造が実際にあったことは保証されている・・・と、NHKは考えたと思うのです。
だから、制作側に勇み足があったとしても、NHKはよくやったとの評価を受けられるだろうと思ったでしょうし、行きずぎがあっても、社会的には許されるとの憶測したでしょう。

その自信作が、BPOから重い違反を指摘されてしまいました。これは、NHKにとって、ショックだったでした。
だからこそ、くやしまぎれのコメントになったのです。

捏造論を支持していた科学者たちは、最終報告後は冷ややかに手を引いてしまいました。
それをNHKはまのあたりにしました。
そうした状況での、このBPO裁定については、NHKもある程度、予想していたかとは思いますが・・・。

小保方氏の「あの日」の告発的な内容にもかかわらず、科学界からの何の反論もなく、若山研究室も相変わらず情報を出してくれませんでした。マスコミが、学者たちから支持されなくなったのです。

制作したプロダクション、NHK,マスコミは、犯人や学者たちに利用されたとの事の展開を読めたでしょう。

ですから、NHKの「ねつ造説に自信をもって番組を作った」との発言も、逆説的にとらえて、NHKは、「こんなはずじゃなかったのに、科学者たちにだまされた!」との解釈でも良いのではないかとさえ、感じます。

NHK以外でも、石川氏、李氏など、利用されました。

この事件が起きた原因に、若山研究室スタッフによる実験ミスの可能性もあったかもしれない。
しかし、実際の顛末は、実験ミスだけでは説明できません。
悪意に満ちた人の手が加わったことは確かであろうと感じます。

何からの画策的な作業をした人を犯人と呼ぶとすると、この人は、実行した作業を知っている。
つまり、実験に使ったマウスやすり替えた検体の本当の姿を知っている。
それを混ぜたり、置き換えたりした経緯を知っている。
答えを知る愉快犯のように、その謎解きを理研の学者たちにせまりました。

解明作業の途上では、学者たちのケンケンガクガクな論争も起きたでしょう。
議論の果てに、学者たちは大いに傷ついたと思う。

こうした義務的調査は、学者たちにとって貴重な時間を浪費し、決してやりたくなかった作業であったろう。
そうした意味で、犯人は多くの予算、労力、葛藤を、多方面の人たちに強いたのである。

今のところ、「私は利用された」との関係者証言はまだ、出てきてはいない。
しかし、そのうち、「私は利用された」発言が出てこないかな?と思う次第だ。