がん化細胞を用いた実験で、酸浴後にヤーカット細胞の初期化が起こるという論文について、若干の議論が起きています。
Modified STAP conditions facilitate bivalent fate decision between pluripotency and apoptosis in Jurkat T-lymphocytes.
Kim JYら, PMID: 26972255
Kim JYら, PMID: 26972255
私も前回の本ブログで、論文サマリーの簡単訳を書きましたが、元の論文は読んでいません。
読まれた方から、あまりポジティブデータではなかったとか、失敗だった!とかの声が聞こえますが、私の感想では、STAP支持者にとっては朗報であろうと思います。
上記論文の著者たちは、文字数の限られる論文サマリーに、あえて、STAPプロトコールとい用語を使ってくれています。
最後に笹井氏へのお悔やみの言葉もあるそうです。彼らは、STAPという言葉と笹井氏に敬意を払っています。
一般的に、実験に用いられる細胞は、がん化した細胞が多く、その理由として、がん細胞は、自律的に増えやすく操作がしやすいからです。とても人工的な細胞と言えますので、その質は特殊とは思いますが、STAP現象とは密接な関係にあります。
今回の実験条件も、ph3.3などいう、細胞にとっては極限の環境において、細胞が初期化したのですが、がん細胞はある程度にもともと初期化しているので、あまり意味がないという解釈があるようです。
しかし、なにより大事なのは、環境が酸性変化すると細胞も変化するというのは、がん細胞に限られたことでなく、細胞に普遍的におきる現象としてとらえられることです。
この世界には成功、失敗というのは決められないと思います。未知のものを扱うのが科学論文ですし、ある実験成果が、どこにどう貢献するかも、何に利用できるかも、将来展望はわからないのです。、
科学の世界は、競争が激しいですから、学閥、派閥も多くあります。バカンティ先生は、麻酔科教授なので、臨床医の片手間に、資金を得て実験をやっているようです。こうした方の仕事を、基礎の研究者は受け入れない場合もあります。
文生のような基礎系の学会では、臨床医の業績はコテンパンにけなされる傾向があります。つまり、アンチSTAPの研究者たちは、外国にもウヨウヨいて(多くはライバル研究をしている)、そうしたライバルたちは、STAPなど無い!と主張するでしょう。
ですから、STAP無い!という実験発表は意味が無いのです。
日本ではこちらが正しいと理解されてしまうようです。一般人をそうした方向へ扇動する学者たちがいるからです。
しかし、世界は広し!で、笹井支持派とか、STAP擁護派の研究者たちも世界にはしっかりいることに、日本人が気付きました。
これからも細胞の酸浴データは出てくるでしょう。一般人でも、こうした基礎研究に興味を持って議論し合う事は楽しいと思います、
これからも細胞の酸浴データは出てくるでしょう。一般人でも、こうした基礎研究に興味を持って議論し合う事は楽しいと思います、
ですから、今回のKimJYらによる実験結果が、ネガティブなものととらえる必要はなく、大事なのは“酸により細胞は変化する”との視点です。
酸浴細胞現象は、世界中、進行形で行われている研究である事実がわかって良かったと思います。
今回はがん細胞を用いた研究でしたが、がん細胞では酸性環境がとても大事なようです。がん細胞が生き延びるためには、酸性環境が必要だという論文が、STAP関連サイトで紹介されていました。
酸性環境とがん細胞の論文のさわりを少し紹介します。がん細胞では、酸性環境で幹細胞か進み、初期化マーカーが発現することがわかっていました。
その前に、少し余談になりますが、がんの基礎研究に、人々が興味を持つことはとても頼もしいと感じます、巷では、保険のきかない遺伝子治療の中に、何百万円もかける人がいます。患者さんはすでに亡くなって、訴訟が起きているものもあります。
めったやたらな治療があるのが、がん治療の現実です。がんの遺伝子治療の中には、治療効果が薄いものがあります。もちろん公的ながんセンターのようなところの話ではありません。
患者サイドは、治療の質や、医師のレベルを知る必要があります。治療成績の信頼性や正当性について、きちんと医師と話し合わないといけないと思います。つまり、特殊で高額な治療を受ける時には、患者側が知識を持たないと悲劇がおきます。
ひどい経験をされた方は多くを語らないことが多いようです。
酸浴と初期化に関する細胞の変化についての論文が以下です。この論文は、無料で配信されており、全文を読むことができます。
Cell Death Differv.18(5); 2011 May PMC3095828 Acidic stress promotes a glioma stem cell phenotype
著者らA B Hjelmeland,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3095828/ PMID: 21127501
Cell Death Differv.18(5); 2011 May PMC3095828 Acidic stress promotes a glioma stem cell phenotype
著者らA B Hjelmeland,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3095828/ PMID: 21127501
(PubMedのサイトに、この番号を入力すると、論文がでてきます)
これは脳腫瘍の一種であるグリオーマ細胞についての研究です。グリオーマは、割と頻度が高く、神経細胞のある組織、特に脳に発生する腫瘍です。
そのうち、特に悪性のもの(進行が早く致死的である)を悪性グリオーマと言います。
がん細胞が増殖するためには、足場を組む必要があり、十分な血管や神経などを作りながら、そこから酸素や栄養を供給されて育ちます。
がんが消える人と、広がる人の違いは、その人のもつ抵抗力(がん免疫)と、がん細胞が本来持つ悪性度(がんとしての生命力)です。
がん細胞の立場になれば、自らが増えていくためには、細胞としての能力が高いことが必要なのです。
がんができた時、がん免疫が強ければ、がんはつぶされます。しかし、がん細胞の生命力が高いと、がんは生き残れます。こうした増殖するがんは足場を強固につくれます。
ホストのがん免疫に打ち勝ち、悪性度の高いがんとなるのです。このがんの悪性度に、実は酸性の環境が貢献しています。
この論文の出だし(イントロダクション)は、悪性で腫瘤状のグリオーマ細胞の性質の紹介です。この腫瘤の内部には、悪性グリオーマ細胞の元となる幹細胞が存在します。
このがん幹細胞は、初期化マーカーを発現していて、酸性の環境を好みます。
この幹細胞は、腫瘍の中に平均的に存在しているのではなく、偏在しています。腫瘍の内部に、幹細胞が集まる場所があり、そこでの環境は酸性に傾きます。
正常組織にとってはph7.1が最適なのに対し、幹細胞はph6.8位でよく増殖し、時にphが5.9位まで酸性が進みこともあります。酸性が進むと、幹細胞が生き残り、逆に腫瘍が大きくなると酸度がゆるみます。
酸性が強いと、幹細胞の増殖はとまるものの、抗がん剤にも抵抗性が獲得され(薬が効かなくなる)、幹細胞は初期化マーカーを発現して、初期化細胞として生き延びます。
要は、細胞は環境により自在に変化し、まわりの酸性条件に影響されます。
酸性が進むと、細胞は初期化して増殖をとめ、じっとストレスに耐えて生き延びる現象が起きます。
酸による初期化現象は、生き物の本質だということでしょう。