食物アレルギーによるアナフィラキシーショックの時に、エピペンが有効です。
 
エピペンは、アレルギーの特効薬のように言われますが、効果に限界のある薬です。
 
そして、医師によるエピペン処方のされ方が、さまざまです。
 
先日、エピペンを処方された親御さんが、医師に、聞きました、「どのような時点で打つのが良いでしょうか?」と。
すると、医師は、「食物アレルギーによるアナフィラキシーの時なら、いつでも良いです」と答えたそうです。
 
これは一見、明快に答えたような気にさせられますが、実は全く答えになっていません。
 
これだけの断片的な事実から、いろいろ言ってしまうのは問題ありますが、エピペン処方について、少し、考えてみましょう。
 
親御さんにとっては、アナフィラキシーという状態が理解できません。親は、過去に子供に起きた状況を知るのみです。この時は、アナフィラキシーか?アナフィラキシー手前の状態か?アナフィラキシーではないか?など、いろいろの状況があります。
 
しかし、過去の時より重症な症状になったら、刻々変化する症状のどれが注射判断の決め手になるのかは、親は誰かから、教わらなければなりません。それはもちろん、処方医からです。
 
人は、過去に経験したことのない事態は、うまく立ち回れないのです。これは医師も専門家とて同じことです。福島原発も同じでした。
 
そもそも、食物アレルギーによるアナフィラキシーと決めることが、それほど、単純ではないですし、医師は、アナフィラキシーの症状の決め手を、詳しく説明しないと、一般の人は理解せず、注射の行動に移せません。
 
医師は、アナフィラキシーという言葉を使わずして、具体的に、その患者さん独自に予想される症状を複数あげ、それぞれについて説明をして、注射のタイミングを理解してもらわなければなりません。
 
医師によっては、ほとんど説明もなく、エピペン処方箋をして、エピペン説明書を渡して、「これを読んでいてください」と言うのもあるそうです。
 
他の病院で、アナフィラキシーかもしれないと言われたと、別の医師に告げたところ、その医師がエピペンを処方したという話も聞きます。
 
医師がエピペンを処方する時には、その医師が、エピペンの必要性を信じた時です。医師は、その患者さんの病状を十分に理解し、エピペンが必要であり、かつ有効性が期待できると判断したからこそ、エピペン処方に至るのです。
 
そして、エピペン処方に至った経緯、実際に使う時の時期や症状については、処方医が患者さんに説明する義務を負います。
 
患者が希望するから、医師が処方するということではないのです。
 
もし、過去に、他の医師がアナフィラキシーと診断した場合、あるいは、他の医師からアナフィラキシーの可能性ありと言われた経験を持つ患者さんを診た医師は、その状況を患者さんから良く聞いて、不明な点については、診断した元の医師に問い合わせても良いです。
 
問い合わせない場合は、実際にアナフィラキシーと診断した医師に、エピペン処方を依頼すべきでしょう。
 
アナフィラキシーに立ち会った医師の方が、次回の発作が起きそうであるかの判断もできますし、次回、どのような時期に、エピペンを使うべきかの指導を、患者さんに的確にできると思われるからです。
 
同じ病院内であれば、救急医は、アレルギー専門医に処方を依頼する事はあると思います。
 
エピペン処方する時の医師は、状況を把握し、症状を予測し、患者さん(親)に注射のタイミングと、救急車手配なども含めた指導してこそ、効果の期待できる治療薬です。
 
アナフィラキシーの原因も、経過、重症度は、人さまざまであり、つまり、出てくる症状は、人により、同じではないのです。一律に、この時点で、エピペンを使用すべきと決まらないです。
 
食物アレルギーの反復する重症型で、過去に死にそうなニアミスを経験した人であれば、早めにエピペンを打つということはあるでしょう。しかし、実際には、こうした人は少ないはずです。
 
実際の診療の場で、エピペン処方で、混乱がある理由は、処方する医師の経験や認識が、極めてさまざまであるからだと思います。
 
特に、問題になるのは、はっきりとアナフィラキシーと決まらない場合です。アナフィラキシー手前の状態、あるいはアナフィラキシーの可能性が少しある状態の時に、エピペン処方しておくべきか?しなくてよいか?の判断が難しいです。
 
医師は、エピペンを処方する時、注射判断の時期と、打ち方を指導する義務があるので、医師自身がアナフィラキシーに精通している必要があります。
  
アナフィラキシーという病気を、医師は知っていますが、実際の病気は、それほど、多くは起きていません。頻度が低く、突発的で、重症度に幅があるような病気については、医師の経験はさまざまで、重症のアナフィラキシーの経験を持つ医師は、それほど多くは無いのです。
 
本物の致死的なアナフィラキシーに関しては、普通の医師であれば、一生のうち、一度経験すれば良い位の病気です。
 
多くの医者が経験したことのない症状であれば、どのタイミングで打つべきとの指導は、簡単ではありません。
 
しかし、医師はニアミスを経験したり、文献をさがしたりして知識を蓄えます。こうした知識を持つ医師でないと、医師自身がアナフィラキシーのイメージをつかめないのです。
 
しかし、残念ながら、知識を持たない医師でも、エピペンを処方します。エピペンは30分くらいで効果が消えるので、どの時点で打つのかは真に大事ですが、そうした知識を持ちません。その説明は、雲がかかったようなものになるでしょう。
 
エピペンは、アレルギーを瞬時に抑える注射と、誤解する専門家も少なくありません。正しい時期に、正しく打てば、すべてアレルギーは消えていくと、でたらめな知識も広まっています。
 
アレルギー診療の知識が少ない医師であれば、アナフィラキシーの知識を患者さんさずけるのも難しいでしょうし、注射のタイミングの指導もできません。
 
患者さんが、エピペンを的確に使えるためには、医者は、時間をかけて過去の症状を確かめ、病気についての患者さんの知識向上に努め、患者さんの判断力を高めておかなければなりません。
 
こうした努力をしないで、簡単にエピペン処方をしてしまう医師では、過去の話も聞かず、適切な指導もないでしょう。
 
しかし、過去に重症のアナフィラキシーを実体験した患者さんであれば、むしろ、その方の経験は、期待できます。重症型なアレルギーを持つ患者さんであれば、過去の自らの経験と理解を生かして、エピペンののみこみも良く、医師は指導もしやすいです。
 
しかし、あいまいなアナフィラキシー、本当にアナフィラキシーなのか、わからない患者さんの場合には、医師のエピペン指導はとても難しい仕事になると思います。
 
外国では、注射しようとした時、誤って指をさしてしまうなどの事故が起きています。日本も、時間の問題で、こうした事故がおきることが懸念されます。
 
注射1本で人が救えるなら、こんな有望なものはありません。しかし、現実は、難しい課題が多くあります。
 
現時点で大事なのは、注射する人のミスを防ぐことですが、どんなミスが実際にあったのか、知識を増やすことです。
 
そして、病気の緊急の判断はいつも難しく、他人に依頼することに完璧を求めず、御互いに許容しあうということだと思います。