読売新聞(8月11日)に、お好み焼き粉に白いダニが大繁殖し、これで作ったお好み焼きを食べた後に、アレルギーが発症したという新聞記事がありました。
以前から、アレルギー学の領域では、話題になっていました。開封後しばらく経ってからのお好み焼き粉を使うと、ダニ蛋白が多量に入ったお好み焼きができてしまい、これを食べた時、ダニアレルギー症状が起きるのです。
卵アレルギーのある人が、卵を食べて、食物アレルギーの症状が起きるのと、同じような反応です。卵アレルギーの場合は、卵蛋白が原因ですが、ダニアレルギーの場合は、ダニ蛋白が原因です。
小麦アレルギーは、小麦蛋白が起こすアレルギー症状ですが、実は、小麦内で繁殖したダニがアレルギーによって起きる胃腸症状の可能性が指摘されています。一見、小麦アレルギーと間違えやすいですが、実はそうではないということです。
同じ様な病気として、魚アレルギーの時には、魚の蛋白でなく、魚についたアニサキスが原因で起きるアレルギーがあります。一見、魚に反応しているように見えますが、じっくり調べてみると、そうではないことが証明できます。いづれにしろ、ダニもアニサキスも、目で見えませんので、これを診断するには、注意深い専門的検査が必要になります。
目で見えない物質がアレルギーの原因になっている場合、目でみえるものに、原因をもとめてしまいがちです。ここに、最初に気づいた医師は偉いと思います。
新聞によると、繁殖したダニの蛋白に反応して、食物アレルギー類似のアレルギー反応をおこした症例は、国内外に135件報告があり、日本では報告例は、35例とのことでした。
実際には、食物中のダニによるアレルギー反応は、もっと、多いかもしれませんが、気づく医師や、裏付けの検査をきちんとやる技術がいなければそのままになってしまいます。
新聞の記事によると、1993年に米国で食品中のダニアレルギーの報告がありました。米国では、日本ほどお好み焼き粉が使われていそうもないですが、こうした医学的な観察眼は、さすが米国です。米国で多いピーナッツアレルギーも、実は食べたピーナッツではなく、塗り薬として皮膚から入ったピーナッツ成分によって、アレルギーが起きることが米国で報告されています。
アレルギーの発症原因を、さまざまに日常的な生活の中でさぐって、するどい目を持ち、実際にそれを検証する医師が、こうした重要な発想に気づくのだと思います。
小麦内では、ダニも増殖しやすいと思いますが、ダニ増殖のためには水分、温度が適切であり、栄養素が多く含まれることが必要です。お好み焼き粉の中には、味を良くするために、魚介エキスやアミノ酸などが、豊富に含まれているそうです。
さて、ダニアレルギーの人は、日本でとても多く、検査をすると、病気は無くても、アレルギー反応が陽性に出る人が多いです。これは、日本人の多くはダニに対して、IgE抗体を作るということを意味しますが、作ること自体は病気ではありません。
しかし、ある程度、量が多くなってしまい、かつ、臓器体質も伴うとアレルギーは発症します。喘息の発症には、気管支が縮みやすいという臓器体質があって、起きてきます。
以前は、ダニアレルギーが最初にあっての喘息になると考えられていたのですが、今は、むしろ、気管支の壁が弱いため、そこから、容易にダニが体内に侵入してしまい、IgEを作りやすくなり、ダニアレルギーが出来上がると考えられています。つまり、バリアの異常です。但し、発症原因には、個人差と、個別性が高く、それぞれの人で、それぞれの感作成立の過程が考えれれます。
ダニの除去で、喘息を防げると考えられた時期には、人々は掃除をすれば喘息が治ると考えていた時期がありました。そして、いろいろな抗ダニグッズが開発されました。今は、掃除では、喘息は防げないのは当たり前になりました。むしろ、気管支のバリアが成熟することが、喘息軽快に向かうと思われています。
さて、ここで、お好み焼き粉の話題に戻りますが、自宅で開封したお好み焼き粉は、開封してあればもちろんのこと、密封したつもりになっても、小さなお好み焼き粉の袋の開け口からダニは容易に入ってしまうという事実に注目してみましょう。特に夏には湿気、温度ともに、ダニ繁殖に有利です。一方、冷蔵庫でもダニは増えないが、死なないみたいです。
つまり、抗原感作というのは、ありとあらゆる機会で起きていて、人がコントロールをすることが、難しいのです。
私たちの生活の中で、ダニは常に増殖の機会をねらっていて、チャンスさえあれば、増殖しようとします。子供の多い家庭では、ダニは増え易く、子どもたちの食べ残し、食べ落としなどの食べ物が、部屋に多量に存在します。ダニの除去は難しいです。掃除は、ダニを無くすといより、減らすことを目的とします。
夜、寝る前に、蒲団の上で暴れない、部屋で走り回らないなど、空気中にまき散らしたダニの成分を吸いこんで、夜間のアレルギー反応とならないようなしつけは、有効です。
人の生活から、ダニを除去するのは、極めて困難であるなら、むしろ、ある程度、ダニと触れる機会を許容していくという考え方が出てきます。
アレルギーの根本治療は、やはり、抗原と触れて、体(免疫)が、その物質と慣れること(減感作)です。ダニへの過剰反応を抑えることを、体が覚えることが、アレルギーからの解放です。
ダニの減感作用法を、経口でやる治療法がありました。ずいぶん、以前から検討されていました。実際に人体実験もなされ、一定の成果は上がっているのですが、今だ、一般治療には至っていません。
ダニ汚染のお好み焼き粉は、ダニの経口減感作に役にたつこともあるかもしれません。でも、慢性胃腸炎の発症など、未知の問題があります。