医者は使いたいが、患者さんは使いたくない薬の代表薬に、アトピー性皮膚炎のステロイドがあります。そして、その逆として、医師は使いたくないが、人々は欲しがる薬があります。もちろん、麻薬の話ではありません。今日はこれについて書きます。
ステロイドの話から始めます。
アレルギー相談では、ステロイドに関する相談が多くあります。アトピー性皮膚炎の治療薬として、専門学会は推奨するものの、ステロイドでひどい目にあったとの、患者さんによるネット書きこみも多く見られます。
ステロイドは、効果がよく見え、薬の実態がわかりやすいです。
赤い皮膚にステロイドをぬれば、その部分の皮膚は白くなります。アトピー性皮膚炎のある人では、この薬の効果を目のあたりにできます。効果に喜ぶもつかの間、ステロイドを止めればすぐ、皮膚は元の状態に戻り、塗れば、又効果がでます。
そうこうしているうちに、塗らないといられない皮膚になっていきます。赤味が止まるのは、血管が収縮するためで、皮膚が赤味を出そうとしても、ステロイドで抑えられてしまうのです。根本を治すものではありません。
そして、「大丈夫なんだろうか?」と疑問を思う患者さんが、ステロイドを止めてしまうと、ひどい皮膚の状態になります。そのまま、医師には行かず、以後、悪化時も保湿剤を使いながら頑張る人もいます。
こうした人が、ネットに書きこむ場合は、ステロイドの恐ろしさを強調することになります。
40台のアトピー性皮膚炎の男性の事例を考えてみます。
彼はアトピー性皮膚炎が小児期からあります。今も顔や首は皮膚が厚く赤味が強いです。でも、彼はステロイドを使わないことを望み、自ら、保湿剤の塗り方を工夫して頑張っています。時にプロトッピクの処方は受けています。
彼の皮膚の赤黒く、厚い状態になっているのは、皮膚がトラブルを繰り返した結果です。そこが病気というのではなく、トラブルをくりかえすと、皮膚は元の状態には、戻らなくなるのです。
人の皮膚は、トラブルをくりかえすと、皮膚の構造に異常をきたしてきます。皮膚は厚くなった、皮膚が固くなった、赤黒くなったと、人の目には映るのです。
彼は、熱く今までの治療の経過を語ってくれました。
彼は主治医の処方するステロイドを塗りたくないと、過去にかなりやりあいました。
医師は、「心配ないから、塗りなさい!」と強く言っても、医師の「心配ないから」というその言葉に不信感を感じました。
彼は、「心配ないとなぜ言えるのか!」と思いました。
この時の彼の内心は、“医者は治せなくても、悪くなっても責任を取らされないが、患者の方は、病気をかかえて苦しまなくてはならないんだぞ!”だったでしょう。
彼は、医者も又、治そうとしていてくれることがわかっていたからこそ、何も言わずに、通院を止めたのでしょう。
医師も、ステロイド薬が本当に心配ないと思っているわけではありません。しかし、目の前で症状をつらがる患者さんを前に、とにかく一旦ステロイド塗って良くしてから、その後のステロイドを調整したいと思うのです。一時的にステロイドを多く使うのは、「心配ないから」という意味でした。
アトピー性皮膚炎は、周期的に悪くなったり良くなったりするので、医者は、悪い時にはステロイドを使うという判断です。完治させられなくてもステロイドで変調させて、皮膚の回復を待つという姿勢です。
但し、アトピー性皮膚炎が重い方では、ステロイドをぬるのをやめれば、元に戻ります。もともと、皮膚をしっとりとした状態に保つ能力が欠けています。医師は、そうした状態を観察しながら、薬を調整します。
医師がその人の皮膚の状態を把握するには、年単位の治療経験が大事です。医者は、その人の皮膚炎が重い人(ステロイドを止めるとすぐだめになる、ステロイド依存性が高い人)なのか、ステロイド恐怖の強い人なのかを、治療をしていく経験で判断します。治療過程で、信頼関係ができあがっていきます。
慢性化する場合には、患者さんからの要望がより大事になります。医師を信頼する時の判断力も大事です。
医師がよく話を聞いてくれて、話もしてくれて、経験が多くて、将来展望をしめしてくれる医師かどうかを見分けるのは、患者側です。治療の間で、判断しなければなりません。
病気が長引けば、患者側の希望にそった治療をしてくれるでしょう。
特殊な治療を勧めたり、名医であると自慢するような医師は、危険です。
でも、彼の言い分は、それを今まで何度も試みて、だめだった!と言いたいのでしょう。彼がそこまで脱ステロイドにこだわるには、もうひとつ理由がありました。実は、彼は、数年前に突発性の難聴になり、その治療としてステロイドの内服した時、皮膚がすっかりきれいになった経験をしました。そして、薬の効果を恐ろしいと感じました。体を変えてしまう薬だと思いました。
彼は、ステロイドを使わずに、ここまで来ました。ステロイドを使えば、今の皮膚の赤黒味や、厚みは無かったかはわかりません。しかし、使わないでで良かったと思います。現代医療が完治させることのできない慢性の病気なら、本人の意向というのは大事な要素だからです。
彼は慎重で、よく考える人でした。ステロイドは有効であることがわかってこそ、その副作用の恐さを知り、薬を使わないと言う判断をしました。彼自身の皮膚であるからこそ、ご自身で選択したのでした。
一方、こうした人と対照的に、薬の副作用に無頓着な医師や患者がいます。
むしろ、こうした人の方が、問題が大きいと思います。
美容関連で使われる薬に問題が多いです。ヒアルロン酸、ボトックスなど、危険が一杯です。全身整形美人と自称する女流作家が、ギランバレーで入院しました。やたらと体に入れた物質がどう影響したのでしょうか?今は答えがありません。
しかし、私が理不尽に思うのは、重症で入院しても、注入した医師たちは、彼女の治療の場にはいないことです。
ここでは、プラセンタ製品について書きます。
美容目的で使われ、ほとんどあいまいな説明で使われていると思います。プラセンタは注射してくれない医者と、してくれる医者がいます。
では、注射をしてくれる医師は良い医師なのでしょうか?
日本でプラセンタ注射に使われているのは「ラエンネック」「メルスモン」という2つです。製品は、人の胎盤から作られます。つまり生物学的商品です。
エンネックは肝臓の病気の場合に保険適応となり、メルスモンは更年期障害が保険適応となります。
プラセンタにはもろもろの成分が混じり、いかなる物質がどの位入っているかは測定できないです。蛋白成分が中心ですが、成分と効能は調べられないのです。いろいろな蛋白性の増殖作用をもつ物質が入っているのですが、その量と作用機序は不明です。短期的影響、長期的影響も不明です。
昔からの薬なので、効能をはっきりさせなくても許可されている薬です。昔は、治療法がなく、効果がはっきり証明できなくても、薬として許可されました。
女性は、偽薬効果似弱いです。若返るという触れ込みだけで、薬を使ってしまいます。副作用を心配するより、若返ることが、最優先だからです。
女性の美容薬として使われています。これは、人間のプラセンタは使われていません。何かの動物のプラセンタですが、どの動物由来か、どの位、入っているかは明記されていません。薬ではないので、法律による規制がないのです。
動物のプラセンタは、蛋白成分なので、保湿効果が発揮され、何らか肌がしっとりするかもしれません。でも、それは、プラセンタ効果であるかは、証明されていません。
蛋白成分は、副反応も起こします。皮膚につけるプラセンタなら、皮膚がかぶれたりもあるでしょう。しかし、それがプラセンタによるものかを証明するには、ドクターとの協力が必要です。
ドクターは、手間のかかる検査しないで、「やめてください」と言う事が多いでしょう。
プラセンタは、若返りのイメージを作りやすいのです。若返りは、もし効果があるなら、がん化の作用を持ち合わせます。ホルモン作用もあるでしょう。
ヤフー知恵袋などを読んでいて、プラセンタ成分量の多いラエンネックで、顔がむくむような気がすると書いた人がいました。
プラセンタは、女性ホルモンの持つ副作用はそのまま引き継いでいると思います。そして、それと共に、成分がはっきりしない不純蛋白も入っています。他人のもろもろの蛋白質は、、それを体内に入れた人の中で、免疫反応を起こしたりする可能性もあります。
プラセンタで注射治療を拒否する医師は、プラセンタの危険性を案じています。医師は、薬を使うときは、リスクとベネフィット(益)を天秤にかけますが、天秤でかけて使わないという判断をしているのです。
人の体から抽出する生物製剤は、元々、多くの危険があります。血液、凝固因子も肝炎、エイズ、ヤコブ病など、危険が多くありましたが、医学の進歩でここまで安全になりました。しかし、今でも完全に安全なものではありません。しかし、輸血は死ぬか生きるかの時に使います。
一方、更年期障害は病気そのものがあいまいで診断基準もなく、何をもって効果があるかの判定もできません。そんな病気に、危険を冒してまでいれたくないと考える医師が多いのです。
プラセンタを注射したことのある女性は、献血ができません。これは、どういう意味なのでしょうか?ヤフー知恵袋には、こんな回答がありました。献血ができないことは、あなた自身が困ることはありません。輸血はしてもらえます
論点がずれていますね。献血ができないことは、プラセンタ注射をした後は、危険な体になるという意味です。その人自身も危険をかかえますし、その人から輸血を受けた人も危険と見なされるから、献血ができないのです。
実際にはそうした事例はめずらしいでしょうが、プラセンタを入れると危険な体になるというところを良く理解すべきです。
恐らく、厚労省もリスクがあって効果が不明な薬が出回るのは嫌なのだと思います。
しかし効果があると主張する医師や患者さんがいる以上、禁止できません。
今後、プラセンタ由来と想定できる病気や、因果関係が証明できる症例が出てきたら、販売中止薬となるのではないでしょうか?