磁気共鳴撮影装置などにより、脳の活性化を血流の変化として、とらえられるようになりました。
 
人が何かを感じる時は、脳の血流が増えて活性化されています。脳神経の活性化は、電気刺激が、神経線維を伝わって、脳内に情報が届くのですが、その時の神経線維は、酸素や糖を消費します。そうした神経線維の酸素濃度変化を、MRIがとらえているのです。
 
なぜなら、生体の細胞が働く時には、酸素と糖は、必須の材料となっています。
 
ニューロンの電位差は、ナトリウムやカリウムが細胞内に出入りして生じますが、そうした変化が起きるためにも、酸素や糖が使われています。
 
私たちが、見たり(視覚)、聞いたり(聴覚)、臭いを感じたり(臭覚)とした外部からの刺激に対し、その情報を意味あるものとして考えるのは、大脳皮質の役割です。そして、そうした脳内の情報連携を結ぶのが神経線維です。
 
しかし、人間には、外から聴覚の刺激が入らずにもかかわらず、聞こえているように感じてしまう [幻聴] という現象が起きます。幻聴は、統合失調症の診断基準として大事な要素となっています。

幻聴の時には、外から聴覚刺激がなくても、聴覚野が活性化していることについては、1999年のネーチャーで、すでにトピックスとして、とりあげられています。Published online 22 April 1999 | Nature | doi:10.1038/news990422-7

その後も、世界的にこの分野の研究が進んでいるようですが、今回は、2004年のスイスの論文を紹介します。
Arch Gen Psychiatry. 2004 ;61(7):658-68. PMID: 15237078
 
幻聴の原因は、まだ議論が多いところです。聴覚領域から入ってきた音や言語を理解する時、脳内神経伝達の乱れや機能不全が、幻聴の病因に関与すると想定されています。
 
方法:
1.5Tの磁気共鳴撮影装置にて、シルビアン亀裂をカバーして12枚の5mmのスライスを得ました。幻聴のある患者さん13人、幻聴のない患者さん13人、そして、13人の健康な対照被験者で、聴覚関連野における脳内線維束の微細な方向性について調べました。
 
結果:
幻聴のある人では、無い人と比べて、側頭横の弓状束部分や前脳梁の部分で、方向性が高いという結果でした。(弓状束とは、側頭-頭頂連結部( temporoparietal junction) の後部と脳の前頭皮質を結ぶ神経経路です)。
つまり、幻聴のある人では、無い人と比べて、特に、左の脳半球の繊維束の活性化に差がみられました。
 
幻聴のある人では、白質の神経線維が共依存的に活性化し、外からの刺激と、内なる言葉(幻聴)との区別を難しくするのではないかと考えられます。