人が自分自身の健康に関して、何に注意し、どのように検診をうけるかの判断は難しいものです。
 
うっかり、がん検診をうけることにより、その結果次第で、人は病気になる、あるいは病気になった気分になってしまいます。その後、検診の精査により、病気がないとなっても、その間にかかえた心配は、その後も心に何らかの心配の種を残します。
 
日本では、便の潜血反応が、大腸がんの検診のスクリーニング検査として、広まっています。便の潜血反応が、食肉などの影響をうけずに測定できるので、この検査は簡便で、かつ、精度は高いです。
 
日本における大腸がん検診において、異常値(便潜血陽性)が出る人の割合などは、データ数値として出ていると思います。しかし、日本では、検診を受けた人と、受けない人で、10年後に大腸がんで亡くなった割合に、どの位の違いが生じるか?などの、長期の疫学研究の検討は、十分でないと思います。
 
どの種類の検診を行うと、がんが減らせるのでしょうか?このような疫学研究の調査を正しく行うためは、検診に参加する人を、検診の種類ごとにわりつける必要があります。たとえば、大腸がんであれば、内視鏡群と、便潜血検査群に割り付けて、死亡率などを比較することなります。
 
正確に比較するためには、検査の種類は、本人の希望ではなく、研究者(第3者)が選ぶ必要があります。
研究に参加する人、すなわち一般住民は、研究者の選んだ検診方法を受け入れ、検査を受けます。
 
研究者は、それぞれの検診の種類ごとに、検診の成果を比較します。
検診により、死亡を減らせた、病気のイベントを減らせたとかが成果です。つまり、異なる種類の検診ごとに、検診の成果を比較することになります。
 
このような無作為割り付けをしないと、人為的な要因が混入してしまいます。たとえば、内視鏡群を希望する人は、すでに、何らかの不安をかかえていたり、がん家系の人であったりするからです。こうし人為的な背景が入ると、内視鏡群検診群にがんが多いという結果になってしまいます。
 
日本では、こうした無作為に割りつける調査はできないことが多いです。
 
さて、この無作為割り付けをしたスペインの大腸がん検診の成績が、ニューイングランドメデシンに載っていましたので紹介します。
 
興味あることに、スペインでも、日本の検査キット(栄研テスト)が使われています。この測定キットは、世界的にも評価が高いようです。
 
スペインでは、内視鏡と潜血テストを組み合わせて、10年後の大腸がんを大幅に減らすキャンペーンを行っています。
 
今回のスペインの大腸がん検診のやり方です。5万7千人の50-69歳の住民を、内視鏡群と、潜血反応検査群に、無作為に分けます。研究者が検査内容をわりつけをしてから、住民本人に話をして、検診センター受診を誘います。
 
現在、この疫学研究は2008年から走り出していて、10年後を経て大腸がんによる死亡がどの位、減らせるか?の成果を目指しています。結果は、2021年に全貌が明らかになるようです。つまり、今は、その途中の成績です。
 
現在までの成績は以下の様です。

内視鏡群に当たった約2万8千人のうち、実際に健診センターを受診したのは、7368人となり、いろいろな事情で人数が減っています。さらに、実際に検査が順調に終わったのが5059人でした。
 
一方、潜血検査群にあたった約2万8千人のうち、では、9512人が、検診センターを訪れていて、実際に検査ができた人は10611人でした。検査の陽性結果は、767人で、663人が、内視鏡検査をしました。
予想されたとおり、便潜血検査群では、検査に参加を希望しない人がすくなかったわけです。
 
大腸がんの発見率は、内視鏡群、便潜血検査群共に、0.1%で大きな違いはありませんでした。
 
しかし、内視鏡の結果、前がん状態の可能性のある進行した(増大した)腺種は、内視鏡群1.9%、便潜血検査群0.9%と、内視鏡を実施の群で多く発見されました。
 
それほど進んでいない腺種に関しては、内視鏡群4.2%、便潜血検査群0.4%とのことでした。
 
以上の結果から、発がんの微妙な変化をみつけるためには、内視鏡群がすぐれているが、便潜血検査群でも、明らかながんは、精度良く見つけられるようです。