エストロゲンは、細胞の新生を促す物質であるため、発がん作用があります。しかし、若い女性で、ホルモン補充療法を行う場合は、自前のホルモン不足など、それなりの正当な治療理由から、女性ホルモンが補充されるため、女性ホルモンの望ましい作用が期待できます。
しかし、閉経後の女性では、事情が異なりなります。以前より問題となっている女性ホルモンによる発がんに答えを出すために、世界的で大小いろいろな比較試験が組まれました。その結果、2002年、WHIが、望ましくないとの結論を出しました。
この研究に参加していたのは、主として60歳を過ぎた女性たちが中心でした。当初から、エストロゲンによる発がんは、予想されていたものの、リスクとベネフィット(益)を天秤にかけるために、この比較試験が行われました。当時、外国で実際に、ホルモン補充療法にしていたのは、閉経後間もなくの人より、もっと年配者であったようです。
使われていたのは、
複合エストロゲン・プロゲステロン製剤や、
tiboloneと呼ばれる合成ホルモンでした。
本日は、ホルモン補充療法の参加者多かったMillion Women Study(百万女性研究)を紹介します。英国で、ホルモン補充療法の効果をみるための追跡集団として、集められた女性たちの追跡調査です。
Lancet. 2005 ;365:1543-51.
ガンが無い、子宮摘出していない英国在住の716,738人の閉経後の女性を、1996-2001年にMillion Women Study(百万女性研究)に組み込みました。この集団を、平均3.4年、追跡したところ、集団の中から、1320人の子宮体がんが診断されました。
調査結果: 716,738人の閉経後の女性のうち、320,953人の女性(全体の45%)が、ホルモン補充療法をしていました。その治療法の内訳は、以下のとおりです。
69,577(22%)が、連日続ける、エストロゲン+プロゲステロン療法群、
145,486(45%)が、1ヵ月につき10-14日の間、エストロゲン+プロゲストゲン療法する間歇療法群、
28,028の(9%)は、ibolone群(日本では使われていない合成女性ホルモンで、内膜症や閉経後のHRTに使われる)、
14,204(4%)は、エストロゲン単独のHRTを使用群です。
全体では、HRT使用者は、子宮体がん(p0.0001)発症の危険を高めました。 HRTの治療者は、未治療者に比べ、それぞれの危険率は、以下の通りでした:
ホルモン補充療法をしていない女性にくらべて、
エストロゲン+プロゲステロン療法の連日使用者では、相対危険度0.71[95%のCI 0.56-0.90]; p=0.005)となり、
子宮がんが低下しました。
Tibolone使用者は、子宮がんが増加しました1.79倍[1.43-2.25]; p0.0001)。
エストロゲンのみ使用者では、子宮がんの発症は1.45倍[1.02-2.06]; p=0.04)でした。
エストロゲン+プロゲストゲン間歇療法では、1.05倍[0.91-1.22]; p=0.5)でした。
tiboloneとエストロゲンのみのHRT療法では、子宮がんを増やしましたが、
エストロゲン+プロゲストゲンは、乳がんを増やしました。発がんへのHRTの影響は、肥満女性で大きくなりました。
結論として、エストロゲンとtiboloneは、子宮体がんの危険性を増し、 プロゲステロンは、子宮内膜において、エストロゲンの発がんを打ち消しました。