5月31日のブログに、ストレス時の、視床下部-下垂体-副腎系が活性化することを説明しました。略してHPA axis(HPA軸)と呼ばれるしくみは、生命現象に必須です。
この時上昇する代表的ステロイドは、コルチゾールと呼ばれて、副腎皮質から分泌されます。ストレスを感じた動物は、コルチゾールが上昇します。ストレスの程度を数値として評価したい時には、ステロイド物質の測定が利用されています。巷で、ステロイドが恐いと言われる理由は、薬として投与された外来性のステロイドは、生存に必須の物質であるステロイドを産生する能力を、我々から奪ってしまうからです。
5月31日のブログでは、男女で恐怖時のステロイドホルモンに対する反応が異なることを紹介しました。男性では、ステロイドは恐怖を忘れ勇敢になるように作用するのに対し、女性はその逆でした。女性は男性と比べ、低レベルのコルチコトロピン放出因子(CRF)に反応し、さらにストレスが強くなっても、コルチコトロピン放出因子(CRF)が、ストレスを治める方向へ対応していくことができにくいのです。コルチコトロピン放出因子(CRF)は、最終ターゲットは、副腎でコルチゾール(ステロイド)を増加させます。
さて、恐怖実験の時に、このコルチゾール(ステロイド)を人工的に体内に入れると、恐怖の程度はどのように影響されるのでしょうか?
今回、紹介するのは、コルチゾール30mg、あるいはプラセボ(偽薬)を静脈内投与した後、恐怖の条件付けへの影響をみました。条件付けをした後に、fMRIや、皮膚伝動速度を用いてテストを行いました。コルチゾールとプラセボ(偽薬)間で、fMRIと皮膚伝動速度を比較したものです。
この実験でも、男性は、コルチゾールを入れた後では、恐怖感が低下したのに対し、女性は、そうした調整は無く、むしろ恐怖感は上昇したという結果が得られました。ステロイド物質である、女性ホルモンは、今回の実験には使われていませんが、コルチゾールと同様の作用になる可能性が考えられます。
PMID: 19683399 Psychoneuroendocrinology. 2010 Jan;35(1):33-46
PMID: 19683399 Psychoneuroendocrinology. 2010 Jan;35(1):33-46
人体実験は、20人の男性と、19人の女性において、恐怖の条件付けを行い、条件付けを覚えさせた後、テストに移りました。
条件付けの方法は、決まった数値を示し、その後に電気刺激を加えました。他の数値では電気刺激は無いようにしました。脳の活性化の評価には、観察、fMRI、皮膚伝動速度を用いました。
皮膚伝動速度で評価すると、男性では、コルチゾール静脈内投与により、条件付け反応が低下し、女性では上昇しました(男性は恐怖を感じにくくなり、女性は恐怖に対して反応を強めた)。
fMRI では、 CS+(条件付けに電気刺激を付けた数値を出す) と CS-(電気刺激のない数値を出す)を比べると, 島皮質「insula 、海馬hippocampus、視床 thalamusで活動性の差がでました。
コルチゾール投与により、男性は、CS+とCS-間で、脳の活性化の違いが縮小しましたが、女性では増強されました。扁桃体の活性化は、プラセボ投与時のみで起こり、コルチゾール投与時にはマスクされました。以上の結果は、男女で恐怖の感じ方に及ぼすコルチゾールの作用は、性差が大きいことを示唆するものでした。