情報の混乱と、競争の激しい時代には、多くの人の精神に負担がかかります。精神疾患の増加は、世界的にみられています。
今回は、統合失調症の治療に関するニューイングランドジャーナルオブメディシン(薬の治験結果では、世界の最高峰の権威ある雑誌)を紹介します。
抗精神病薬は、50年来使われてきた第一世代の抗神経病薬
(ブチロフェノン系: ハロペリドール ピパンペロン スピペロン フェノチアジン系: アセプロマジン クロルプロマジン フルフェナジン レボメプロマジン プロペリシアジン ペルフェナジンなどが代表薬)
が長く続きました。しかし、錐体外路症状など、不快な副作用はつきまといました。1993年から多数の抗薬が世にでました。今は、こちらが主流になっています。今回は、これらの薬の効果を比較しました。
従来薬のペルフェナジン日本では1959年より販売。 第一世代薬の代表は、有効性からハロペリドールで、世界で最も使われていたが、錐体外路症状も強いことから、今回は、このペルフェナジンを比較薬に用いた。
米国における新薬4種の発売時期
1993年リスパダール(リスペリドン 日本は、1996年4月)
1996年ジプレキサ(オランザピン 日本は、2001年6月)
1997年セロクエル(クエアチピン 日本は、2001年2月)
2002年アビリファイ(日本は、2006年1月)
リーバーマンJA、らにより、57の米国の地域から、合計1493人の統合失調症を対象に、薬剤比較試験が行われました。それぞれの薬剤別に、差がでないようにしました。治療対象は、統合失調症の症状の続いている人たちで、平均年齢は、40歳です。過去になんらかの神経関連薬を服用したのは、平均24年前、何らかの抗神経病薬を服用したのは、平均14年前でした。
男性が、7割、白人6割、黒人3.5.割、既婚者1割でした。
又、割り当てられた薬で副作用があった人や、症状が改善しない場合には、他剤の追加は許可しました。
重症になり、目的薬の継続が不可能と主治医が判断した人は、対象から除いています。
論文は、以下です。http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa051688
N Engl J med. 2005;353の(12):1209-23
N Engl J med. 2005;353の(12):1209-23
背景:50年前から使われている第一世代の抗精神病薬(ペルフェナジン)と、1993年以後に発売された第2世代の抗神経病薬を二重盲検試験で比較しました。
二重盲検試験とは、患者も医師も飲んでいる薬の内容がわからない状態で投薬を行い、効果判定に主観を入れないようにして、薬の効果を評価する方法です。無作為割付けとは、どの薬を飲むかを抽選(作為のない方法)で決めます。こうした方法による薬効評価は、日本では、ほとんどやられていません。
方法:オランザピン(7.5~30mg/日)、ペルフェナジン(8~32mg/日)、クエチアピン(200~800mg/日)、リスペリドン(1.5~6.0mg/日)を最高18ヵ月間の治療を無作為割付けされました。 後に、FDAがジプラシドン(40~160mg/日)を許可して、治療薬枠に含みました。結果: 18ヵ月の間に、続けて薬を飲み続けることができた人はどの薬剤でも、平均、1/4程度でした。中断してしまった人は、オランザピン64パーセント、ペルフェナジン75パーセントでした。長く服用できた人は、オランザピン・グループでした。
オランザピンは体重増加、そして、ペルフェナジンは錐体外路症状がおきてしまうことが、中断と関係していました。
結論: 各々の薬剤群に含まれる患者は、いろいろな理由で、かなりの人が割り当てられた薬剤をつづけることができませんでした。薬の効果に関しては、薬剤間で、大きな違いがありませんでした。従来の抗精神病薬ペルフェナジンと、新薬の、クエチアピン、リスペリドンとジプラシドンの効果は、類似していました。PMID: 16172203
元々、副作用が個々の人で多様であることから、こうした治験の計画自体が、とても難しいということでしょう。
この研究の解釈は難しいですが、新薬は、従来薬よりはるかに有効とはならないまでも、副作用が少なく、従来薬と同様の効果が出た事は評価できるのかもしれません。
統合失調症は、ひとりひとり脳内環境の違いがあるので、個々の人で、薬剤の微妙な調整を必要とする治療であると、改めて確認したと言えるでしょう。