前回、ラットにおけるDBSという治療を紹介しました。この治療は、脳内に小電極を外科的に挿入して、神経細胞(ニューロン)を、長期に少しつづ刺激する方法です。人では、すでに重症のパーキンソン病に、DBS治療が試みられています。パーキンソン病の症状は、神経伝達物質の放出が妨げられます。主要な臨床症状は、運動障害ですが、うつ状態も病気の治療のターゲットです。
 
パーキンソン病は、parkin(パーキン)と呼ばれるたんぱく質の異常が起こります。この蛋白の本来の働きは、障害されたにミトコンドリアの除去です。よって、この蛋白に異常がおきると、細胞のミトコンドリア内に蓄積する有害物質の除去作業ができなくなります。細胞内の異物や代謝物質の除去ができなくなります。そして、レビー小体と呼ばれる物質が蓄積してしまうのですが、レビー小体の主成分であるα―シスヌクレインの増加が、病態に関係します。この物質は、神経伝達物質の放出に大事です。α―シスヌクレインを産生する遺伝子部分のメチル化が外れて、遺伝子発現が亢進するのではないかなどが推定されています。
 
重症なパーキンソン病の治療に、DBSが試みられています。
DBSで刺激する場所は、脳の基底核の淡蒼球と視床下核です。解剖学的にわかりにくい部位なので、興味ある方は、ウキベデジアでご確認ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%A1%E8%92%BC%E7%90%83
この両部位を、2年間、電気刺激して、臨床的改善があったとする成績が、N Engl J Med. 2010;362(22):2077-91.にありましたので、紹介します。

論文は、無料で入手できます。http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa0907083
 
重症の299人の特発性パーキンソン病患者を対象に、一方を淡蒼球刺激(152人)、もう一方の群に、視床下部刺激(147人)、の2種のDBS治療群に、無作為割付けし、2年間、治療と観察を行いました。どちらも、運動能力の改善がみられましたが、両群の治療効果に違いはありませんでした。
患者本人の評価でも、両群に有意差がありませんでした。視床下部刺激を経験している患者の方が、淡蒼球刺激(P=0.02)群より、ドーパミン作用薬が少なくて済みました。2年間の治療の間には、有害事象が、両群とも、約半分の患者に生じました。