わたしは、ちゃんとしゃべりだすより先に
歌うことを覚えたのだそうです。
多分、歌いだすのが早かったのではなく、
しゃべりだすのが遅かったのだと思います。
3、4歳までまともにしゃべらなかったらしいから。
今朝、ふと思い出したこと。
ほんの小さな頃。
まだ赤ん坊から子どもに移行する時期の記憶。
リビングのカーテンの端っこをつかんで、
つたない足取りで前後に踊るように足踏みしながら
わたしは黒人男性の誰かが歌う
“You are my sunshine”にあわせて歌っていた。
あるいは、
“When The Saint Go Marchin' In”だったかもしれない。
アメリカの古いジャズスタンダード。
ただ嬉しくて、わけもなく楽しくて、
きっと凄くはしゃいでいたに違いない。
そのときの感覚だけがふっと甦ってきた。
あいまいな記憶のなかで
自分はちゃんと思考していたような気もする。
きちんと言葉を発せられなかったくせに、
しっかり話せていたようなつもりでいる。
そういう記憶は音がともなう。
小さな頃の記憶は、
優しくて懐かしいレコードの音。
+++ +++ +++
わたしが生まれ育ったのはごく普通の家庭だけれども、
いま思うと分不相応なほど立派なステレオ装置が
リビングルームに置いてありました。
大きなスピーカーと、レコードプレーヤーと、
カセットテープとラジオの聴ける木製ステレオ装置。
子ども部屋で寝るのが嫌で、
製図の仕事をする母の隣に布団を敷いて
薄明かりの下で眠るわたしの
子守唄代わりに流れていたのは
母が好んで聴いていた荒井由実。
小さな頃の記憶は切れゞ。
次に思い出す場面はピアノのある風景。
いつからか、うちにあったYAMAHAのアップライト。
最後に弾いたのも、次に弾くのもきっとわたし。
実家に帰るたびに必ず弾く馴染んだ響き。
調律されてなくて少し音程が狂っているけれど、
いまでもキレイな音が鳴る。
クラシックピアノは引越しとともに小学生で辞めてしまった。
きちんとトレーニングもしないまま時は流れて
いまではまともに弾ける曲はひとつもない。
10代で、わたしはポピュラーソングに夢中になった。
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高校生の頃に好きになったのはCarol King
。
70年代にリリースされた名盤
『Tapestry』
は何度も何度も繰り返し聴いた。
学生時代にバンドでコピーもやった。
いろいろな曲のコードをとって家で弾き語った。
Carol Kingはどことなく荒井由実に似ている。
同じ頃によく聴いたはっぴいえんども
どこか同じ流れを感じる音。
荒井由実の初期のバックは
細野晴臣はじめとした
はっぴいえんどの面々が参加している。
小さな頃からたくさん聴いた音が
わたしの音楽や好みを作ったのだと思う。
音にあふれる環境で育ったこと、
いまさらながらに恵まれていたのだと思う。
あの木製のどっしりとしたレコードプレーヤーは
いつのまにかなくなってしまったけれども。
You are my sunshine
My only sunshine
You make me happy
When skys are grey
You'll never Know dear
How much I love you
Please don't take my sunshine away
おわり。