えー、勢いでついに書いてしまった……推敲なし、ピクシブにあげたものをそのまんまですが……ついにNLGLオンリーで通してきた私がこっちの道に……




……ついにやってしまったかぁ。二時間くらいで推敲せず、別にやらなきゃならないことで死亡フラグ立ってるにも関わらず書いてしまった初めてのBLもの。といっても、ラブありません。臨也愛が昂じてそれらしきものを書いてしまった、という感じ。原作の12.13巻での出来事は、まだ買っただけで読んでないけど一応大体知ってます。その上で、なんていうか……シズちゃんには臨也を理解してあげてほしいなって願望が滾り……臨也は理解されたくないでしょうけどね、当人が分からない所まで分かるシズちゃんになってほしい。

色々適当な上ラブっぽいシーンはほとんどない書き殴りシズイザですがよろしければどうぞ。


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信仰(シズイザ)



 赤い明滅、パトカーのサイレン、張り巡らされた"立ち入り禁止"の黄色いテープ、野次馬。それらが、本日最後の借金の取り立てに足を運んだ平和島静雄とその上司である田中トムが見た風景だった。

「……あちゃー、こりゃタイミング悪かったな。取り立てどころじゃねぇべ」

「……事件ですかね」

「死人が出てるタイプのな……」

 主にとある男の差し金であることが多いとはいえ、トラブルを寄せ付ける磁石のような体質であり、同時に不本意ながら池袋最強の称号を冠している静雄だが、揉め事や騒乱の類は大嫌いだ。彼は名前の通り平和で静かな生活を望んでいる。しかし、恐ろしく沸点の低い性格が災いして結局いつも擾乱の只中で火に油を注ぐ役回りとなってしまうことが多い。取り立て屋二人がやってきたのはそれなりに余裕のありそうな、よくある二階建ての一軒家だったのだがその周囲はあまりに騒々しく、何があったのかは知らないがどちらにせよ取り立て屋だといって警察が通してくれるとも思えない。寧ろ事情について訊かれることにでもなったら面倒だ。そう判断した静雄もトムも、野次馬の一部とはならずにそのまま踵を返すはずだった――しかし、こんな時でも見事に発動する静雄の索敵レーダーは明確に抹殺対象の所在を示唆した。

「……トムさん、先戻っててください」

 その乾いた静かな声とは裏腹に、警察がいるにも関わらずカーブミラーを握り込みメキメキと常識的には考えられない音を立てながら金属類を"引きちぎった"部下の様子に、察しの良い上司は即座に事情を理解し、彼を決して刺激しないように一切の追求をせずに、適度な速度でその場を逃れることにした。



「やぁシズちゃん。警察があれだけ集まってれば俺を殺した後出頭する手間が省けるって思ったのかな?君らしい短絡的な発想だね。別件の殺人まで起きたら増員されると思うけどなぁ」

「五月蠅ェよノミ蟲、黙って死ね」

 丁度警察が集まっているかの住居の様子が大体見えるようになっているそこは、近所の人々が昼間は遊びや休息の為に訪れているのであろう公園の中のちょっとした丘だった。植え込みや木々が連なり、その一点で屈みこみ事件現場のほうを向いていた折原臨也の黒衣といって差し支えない恰好は、弱々しい外灯がなければ沈んで殆どろくに見えもしなかっただろう。そして、それが仇敵だと確信できている以上、今日に限っては静雄にとって彼の姿はぼんやりとしたシルエットであってくれたほうが良かった。折角引きちぎってきたカーブミラーが周囲の僅かな光を反射して揺らめき、それさえも憎々しい敵の黒髪の艶をなぞった時、爽やかな声で静雄を迎え入れた臨也の様子は何処か薄気味悪く、常日頃のように咆哮をあげて本来の用途から解き放たれた武器を叩きこむ気概を削ぐ何かを放っていた。その気配があるだけで、声がするだけで、静雄の総身を怒りで満たす存在であることには変わらないが、何故か動けない。というより、それを理解しているかのように仇敵も動こうとせず、極めて異常な膠着状態に嵌ってしまった。酷い居心地の悪さを感じている静雄とは対照的に、彼からはその横顔しか伺えなかったが臨也はいつも通りの飄々とした空気を纏いながらも恐ろしく静かな眼差しをしていた。短いのか長いのか分からない沈黙が流れた後、先に口を開いたのは臨也だった。

「……君と鉢合わせするのは、想定内だった」

「……そうかよ」

「あの家庭の事情を知ってたからね、君たちがいつ取り立てに来るのか情報はチェックしてたんだ」

「……つまりアレか、死人が出たのもテメェの予定通りって訳か?臨也くんよォ……」

 事情は全く知らないが、静雄は臨也がまた他人の人生を破滅させたのだと確信すれば、もう他に容赦しない理由は要らなかったので、握り込んだカーブミラーをゆっくりと掲げ、同じくゆっくりと一歩を踏み出したのだが――どうも違和感が伴う。彼の野性の勘と、逃げ出そうとしない天敵の態度がその推測に足りない部分があることを訴えていた。

「……死人はねぇ、いつか出るとは思ってた。だからさ、死ぬ前に、俺が死ねって言ったら素直に死んでくれるような子になってもらおうと思ったんだよね」

「……は?」

 意味が分からない。そういえば、静雄の感覚からすれば理解不能ではあるがなぜかこの胡散臭い男を、容姿に騙されているのか上手く口車に乗せられているのか分からないが、信仰の対象のように崇める少女たちがいるというような話を聞いたこともあるが、不快感を感じるだけで興味はなかったのでその件について深く考えたことはなかった。臨也はちらりと静雄に漸く赤みの強い瞳を向けると、ゆらりと立ち上がる。しかし、その手にナイフは握られておらず、にも関わらず静雄が僅かに息を呑んで直ぐに動けなかったのは、あまりにも優艶として慈愛に満ちながら、矛盾することなく空虚な眼差しのせいだった。

「……あそこの家の娘さんさ、外から見たら分からない程度にだけど父親にそれは酷く虐待されててね。母親は父親の言うなりの木偶状態だったんだけど……兎に角、娘は……虐待の内容なんて喋っても激昂した君が何仕出かすか分からないし、俺もあまり話したくないから言わないけど、精神が壊れようが家族を愛してた……信仰してた。まぁ、俺のそういう話も多少は耳に入ってるかも知れないけど、俺が手駒にするには丁度良い存在だったんだ」

「てめっ……」

 手駒という言葉に露骨に剣呑さを増した目つきで敵を睨みつけるが、臨也は気にした素振りさえなく淡々と語り続ける。

「……あの子はその内虐待で死ぬだろうと予測はしてた。別にそれでも構わないけど、どうせなら信仰の対象を俺にシフトさせて役立ってもらって、生き続けられるようならそれは普通の感覚でいえば虐待で死ぬよりはマシだろうし、俺の都合で死んでもらう必要が出てきたら死んで貰えばいい話だし、いつまでかは分からないけど新しい居場所を与えられる……はずだったんだけどね」

 静雄は壮絶な不快感で、知らず知らず奥歯を噛み締めて顔に血管を浮かび上がらせ、今直ぐにでも仇敵に躍りかかりその頭を殴り割ってやりたかったが、次第に話が見えてきてしまった為に湧き上がった別の怒りがその憤怒を押しとどめた。聞きたくないにも関わらず、躍りかかろうとする手前の奇妙な姿勢を次第に崩しながら臨也の、詩を紡ぐように語られる残酷な物語を耳に流し込まれていた。

「……まさか、今日があの子の命日になるとは思わなかった。あの子の家族への信仰心って相当強くてさ、俺の……そうだな、シズちゃんには洗脳っていえばわかり易いかな、俗っぽくてシンプルで……洗脳にもなかなか落ちてくれなくてさ、話をさせるのにも時間がかかったよ。で、やっと……家を出る準備をするって話になったんだよ。まだ家族への信仰は捨てられないけど、俺のことも徐々に信頼してくれてさ、ちょっと離れて暮らしてみるのもアリだって思ってくれたからさ、何なら今夜遅くにでも連れ出そうと思って来たらさ……遅かったよ」

「…………」

 この男がしようとしていたことは、決して慈善活動の類ではない――恐ろしく利己的で残酷な所業だと理解はしていたが、それでも人間としての倫理観をきちんと持っている静雄は、少女が家族に殺されるよりは、まだこんな悪逆な男の人形としてでも生きているほうが幾分かマシだと感じてしまった。実際にどちらが幸せかなど、当人以外誰も知る筈はないのだが。当人の為など、全く以て考えていない――そういう自覚があるからこそ、臨也は表情を変えもせず、俄かに静雄と向き合い、首を傾いで試すように言葉を続けた。

「……警察、なんで来てるんだと思う?」

「そりゃ……俺ニュースとかあまり見ねぇからよくある話かはわかんねーけど……そのろくでもねぇクソオヤジがやりすぎて、娘死なせちまって、慌てて警察だか救急車だか呼んだんじゃねーのか」

 違う。臨也がそう問いかけるからには、違うのだ。静雄は分かっていたが、その通りであることを願って"よくある話"を口にした。そして、臨也は微笑みで以て、その希望を圧殺する。

「……俺さぁ、手伝ってあげたんだ。あの子が、虐待に耐えかねて自殺したって見えるように。……まあ、よっぽど優秀な鑑識がいたらバレちゃうかも知れないけど、頭を強く打ったのが原因みたいだからさ、屋根から飛び降りたように見せかける為に両親に細工させたんだ」

「ッ……なんで……」

「んー、手駒予備軍が一人減っちゃったからさぁ、素直な子供のほうがいいんだけど、大人二人を代わりにしようと思ってね」

 その瞬間、静雄に特有のブチリ……と、血管が切れる音がした。しかし、彼は手にしたカーブミラーを臨也に対してではなく足元に放ると、つかつかと世界一嫌いな男の前に歩み寄りその胸倉を掴んだ。

「臨也テメェ!!」

 しかし、敵のその眼は揺らぎもせず、不気味な光彩を湛えたまま怒りに満ちた静雄の姿を映し込むだけだった。

「シズちゃんだったらその父親をボコボコに伸して、死にかけの状態にした上で警察に突き出すかなぁ。でも人一人殺したくらいじゃさ、そんなに長い間刑務所に入ってるわけじゃないし、まあボコボコにされた後遺症が残ったとしてもさ、なんとか普通に生きていくと思うんだよね。俺の手駒を奪っておきながら、それは軽すぎると思うし……それに、彼女は信仰の内に死んだんだからさ、立派な殉教者だよ。俺は、彼女の死を尊重する。今まで誰にも言わないことで守ってきた家族が、殺人者とその共犯になったら……死んだら消えてなくなるだけだとしても、俺が知ってる彼女の"過去"が哀しがるような気がするんだよねぇ」

「……」

「……流石に虐待の痕跡までは消せないし、死体の処理は結構リスクがあるからさ。そのくらいの罪は負って貰わざるを得ないけど、殺人者という烙印に比べればね……で、彼らは人殺しにならない代わりに、一生を俺の手駒として送るのさ」

 クスッ、と恐ろしく人の良い笑みを浮かべて、臨也はいつの間にか緩んでいた静雄の手を自分から引きはがした。

「……俺はいろんな証拠を持ってるし、生前の彼女の話も録音してバックアップも取ってある。……面白いよねぇ、刑務所に入って与えられた刑期を全うしたほうが、よっぽど楽だって分からない訳じゃないだろうにさぁ。兎に角前科者になるのが嫌なんだろうね……ま、虐待だけは隠し切れないにしても、だ」

 そこまで話を聞いて、静雄は初めて自分が嫌な汗をかいていることに気が付いた。目の前の"笑顔"は一体何なのだろうか。理解出来ない。一生をかけても、この男を理解することなど出来ない。否、したくない。これも初めて気が付いたことだが、カラカラに渇いた喉からどうにか静雄は言葉を絞り出す。

「テメェはっ……」

「……なにかな、シズちゃん。……今から、隠ぺい工作されてますよって言ってくる?別に止めないよ」

「……ノミ蟲よォ。てめぇ……怒ってんだろ」

「……?」

 短い眉を少し顰めて少しだけ口の端を上げて嗤う――いつもの笑みを張り付けて、臨也は首を傾げて見せた。

「……予定を狂わされて腹が立っている、という意味なら少しだけ当たってるけど、ちょっと違うかな。俺は人間を愛してるから、虐待者で借金も踏み倒すろくでもない殺人者の父親も、純粋に家族を愛し続けて殉教した哀れな少女も、同等に愛してるんだよ。その子の代わりに復讐してあげようとか、そんな傲慢なことは考えてない。折角だから利用し尽くそうと思ってるだけッ……」

 流麗なまでに零れ続けた臨也の台詞が突然止まったのは、静雄が何の前触れもなくその手でいつかかち割る予定の頭を包み込み、自身の決して厚くはないが恐ろしく頑丈な胸板に押し当てて黙らせたからだった。

「……」

 何の真似だ、と問うまでもなく臨也は身を引き離そうとして、その袖口から隠しナイフを取り出して無遠慮に二の腕やら腹やら背中やらお構いなしにグサグサと刃をめり込ませ始めたが、何しろほんの切っ先が皮膚を切るだけなので、血こそ出るがダメージは殆どない。押し黙ったまま臨也の力が弱まった所で、その頭を解放してやる。底冷えするような目で静雄を睥睨した臨也は、暫く足りなくなりかけていた酸素を取り込むために肩を大きく動かしていたが、落ち着いてくると忌々しそうな、見慣れた不遜な薄笑いを見せた。

「……化け物の癖に勘違いで同情?気持ち悪いよ、吐きそうだ」

「ああ、いい気味だ。せいぜい気持ち悪がってろ」

 静雄は、戦意は全く篭もっていないが、今度は自分自身が驚く程冷たい声を響かせていた。

「……俺はてめぇがブッ殺して欲しい時に殺してやる程都合のいい喧嘩人形じゃねーんだよ。……まぁ、保証はしねーが、苦しみたいなら好きなだけ苦しめよ」

「……シズちゃん、自意識過剰もいい加減にしたら?確かに誰かきたらくっちゃべってやろうと思ってたけど、来たのが偶々君だったってだけだ。不本意だけど、ただの耳の穴だと思えば人間でも化け物でも同じだから喋りたいことを喋りまくっただけなのにね。あとで新羅にでも話そうかと思っていたくらいだよ」

「そうかよ。満足したか?」

「死ね」

 いつになく脈絡のないシンプルな切り返しが、あれこれと理屈をこねられるのに比べて遥かに耳障りが良かったせいなのか分からないが、静雄は特に憤怒に駆られることもなく、くるりと背中を向けた。天敵の隠し持つナイフなどより遥かに鋭利な眼差しを背後に感じながら、彼は常の無表情の裏側で密かに思う。



――……何されても、どんなイヤなもん見せられても愛してるってよォ……――


――……てめぇ自身がその"信仰"とやらの虜じゃねーか。ノミ蟲のくせに……――


「……胸糞悪ィ」

 


 いつもと変わらぬ池袋の街に出迎えられ、最初に呟いた一言は、抗いがたい重さで支えきれなくなった十字架のように地面に落ちていった。


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臨也の人間愛って、いうなればあまりにも寛容な人間信仰じゃないかなーってちょっと思った。善も悪もひっくるめて愛してるって分狂信的ですしね。人間を愛している臨也が大好きなんだけど、シズちゃんが、彼を人間への信仰から解き放つ……みたいな願望がじんわり。


とりあえず臨也は臨也は自分だけで自分の心を守らなくていいように、いつか、なってほしいなぁ。まあ、臨也の行く道ならどんなでも目を逸らさず見届けますが…!





あと宣伝??ですが、なりきりグルッポ作りました。多分メンバー増えないだろうなーって分かってるので一か月で消える気はするんですが、ご興味あればお気軽にご参加ください。キャラ非固定、置きレスで物語を紡いでいきましょうってかんじです。