息子が幼稚園の頃、夏休み前の最後の登園日に園からカブトムシのサナギをもらって帰った
カブトムシ好きなら常識なんだけど
幼虫からサナギになる時には地中に蛹室という部屋を作ってそこでサナギとしてじっと待って羽化する
その蛹室を壊すと羽化できないのだ
なのでサナギを弄るのは御法度なんだけど、止むを得ず蛹室を壊してしまった場合は、トイレットペーパーの芯で人工蛹室を作って羽化させることができる
なので、うちでも人工蛹室を作ってやった
息子はサナギが羽化して成虫が出てくる瞬間を毎日楽しみにしていた
待ちに待ったその時がやってきた
サナギから羽化したカブトムシ
なんだけど
羽化に失敗して羽がグチャグチャになっていた
それはもう綺麗な羽になる事はない
せっかく待ちに待ったカブトムシが出てきたのにこんな変な羽でガッカリ
と思っていたのは親だけで
息子はそんなカブトムシに大喜びしていた
そんな息子の喜びを素直に受け止めてあげれば良かったのに
『こいつは羽がグシャグシャだから長く生きられない。』
そんな事は息子には関係なかったのに
島根に帰省する時に一緒に持って帰って
爺ちゃんちに置いて帰った
息子は置いて帰りたくなかったのに
それからしばらく、1年とか経っても時々息子が聞いてきた
「あのカブトムシ元気かね?」
父は「もうとっくに死んどるじゃろー」
と答えていた
あの時なぜ息子にとってオンリーワンで大切なカブトムシを
第三者である親父が「こいつはダメ」みたいな事を言って飼うことを許さなかったのか
この数年、夏が来るとその時の事を思い出しては
息子に申し訳なく切ない気持ちになる
偏見を持つのはやめよう
豊かさを失うだけだ
つづく