胎児の無頭蓋症発覚による中期中絶手術に関連することを書いています。読んでいただく方はご留意ください。
医療センターでの手術日程が決まりました。
もう10日後には入院です。心は沈んだままですが、この間にしかできないこと、この間にしなければならないことがたくさんあります。
入院や産後休暇があるので、事情を話さなければならない人が何人かいます。
まず、妊娠のことすら伝えていない上の子に話すことにしました。
5歳の子が、この話をどう受け止めるか、どう話すか悩みましたが、5歳に分かるように簡単に、でもちゃんと伝わるように話すしかありません。
入院前の最後の土曜日、夫が諸事情で不在だったので、子鉄の上の子と2人で鉄道博物館に行く予定にしていました。
まずは館内を普段通り楽しんで、休憩に入った新幹線が横を通るカフェで話を始めました。
「◯◯(上の子の名前)にお話があるよ。」
と切り出した時点で既に涙が出てきます。
上の子は、いつもと違う雰囲気を察したのか、大好きな新幹線が横を次々に通ってもそちらを見ることなく、わたしの話を聞いてくれました。
「母ちゃんのお腹に、◯◯の弟か妹になる子がいるよ」
「え!ほんと⁈弟がいい!」
「そっか、◯◯は弟がいいのか。でも、実はこの子に病気が見つかってしまってね。今お腹の中では元気なんだけど、外の世界では生きていけない病気ってことが分かってね。」
「…どういうこと?」
「(詳しい説明は避けました。)ずっとお腹の中にいるわけにもいかないから、来週母ちゃん病院にお泊まりしてこの子を産んでくるね。
残念だけど、生きていけない病気だからね。一緒に過ごすことはできないんだよ。」
子どもの前なのに、もう涙が出てしまって止まりません。平静を保つのに精一杯です。
「えー… いやだよ。なんで病気になっちゃったの?」
「お医者さんも分からないんだって。」
上の子は悲しそうで、でも腑に落ちない表情をしています。
しばらく考えて、上の子はこう言いました。
「注射は⁈注射して病気治らないかな⁈お腹の外からあかちゃんに注射して!」
多分、予防接種を思い出したのでしょう。
やや意表をつかれましたが、上の子なりに赤ちゃんを救う方法を一生懸命考えたのだと思うと、さらに泣けてきてしまいました。
実は、事前に医療センターの先生に上の子への説明の仕方を相談していました。5歳の子の「なんで?」に、分からない、仕方ない、はモヤモヤさせるだけだと思ったのです。
「お医者さんが言ってたよ。世の中には、治る病気もあるけど、治らない病気もあるんだって。
注射や薬や手術で治る病気なら治してあげたいって。でも、この子は、大きくなる途中で体がちゃんとできなくて、外に出たら息ができなくなるの。
どんなにすごいお医者さんでも、治せないんだって。」
上の子はしばらく黙った後に、小さい声で言いました。
「病気だいっきらい。なんで病気なんてあるの」
本当にそうだよな…と思いました。
誰を責められるわけでもない、強いて言うならやはり自分を責めてしまいますが、それをやり始めるととてつもなく苦しいループにはまるだけです。
病気が憎い。しかも、この病気に勝てない。
それなら、と考えていたことを上の子に話しました。
「家族になって生きて一緒に過ごすことはできないけど、この子は確実にお腹の中で生きてきたよ。ちょっと母ちゃんのお腹出てるでしょ?
◯◯は、弟か妹がいたことをずっと忘れないでいてあげてほしいな。それと、◯◯が元気で生きてることは、すごいことだと思ってほしいな。」
「…はーい」
どこまで受け止めてくれたか分かりませんが、ありがとうと伝えて一旦話を区切りました。
「赤ちゃんに何かしてあげたいことある?母ちゃんは、折紙で何か折ろうかな。あとおやつあげようかなと思ってるよ。」
「折り紙折る〜」
その後また博物館に戻り、とりあえず話せたことに安堵して帰宅しました。
帰ってから夫に、上の子に話したと伝えました。
心配そうに、どんな反応だった?と聞かれたので、一部始終と、注射のくだりを話しました。
へぇ…そんなこと言ったんだね。
◯◯なりに考えたんだね。
と、私と同じような感想を持ったようでした。
弟が生まれた今も、いちばん上の子は、うちには子どもが3人いるよね〜と言ってくれます。
ちゃんと話を聞いてくれていたんだと嬉しく思います。
さて、上の子に話すミッションはクリアしました。
次はそれぞれの両親、そして職場です。