ここから、胎児の病気と人工妊娠中絶に関する内容がしばらく続きます。読みたくない方は閉じていただきますようお願いします。


月曜日午後休を取り、産院からもらった紹介状を持って、夫と共に医療センターに向かいました。

何を話していいかも分からず、2人とも重い気持ちと足取りで無言のままでした。


NIPTで来たとき、もうここに来る必要がなければいいなと(陰性だと来なくてよかったため)思っていたのに、まさか全く別の要件でまた来ることになるとは。そして、今日この子の運命がわかるのだと思うと、もう怖くて逃げたい気持ちでいっぱいでした。


苦しい待ち時間の中、妊婦さんと、その旦那さんと思われる人が診察室から出てきました。妊婦さんは泣いていて、なんでこうなった、みたいなことを言っていました。

事情は分かりませんが、やはりこの医療センターの性質上、残酷な運命を突き付けられる人は多いのかもしれません。


そうしているうちに、名前が呼ばれました。

コロナ禍だからか、夫は外で待っていてくださいということでした。

優しそうな男性の先生が、エコー室に案内してくれてエコーが始まります。


今日も心臓は元気に動いて、手や足も動かしています。

もう、直視できません。目を天井に移しました。

先生は長い時間をかけてエコーしてくれていますが、それを待つ時間が辛かった。

でも、動く姿を見られるのも後少しかもしれない。目に焼き付けておきたい…勇気を出してモニターを見たとき、先生が言いました。


「うーん…そうですね…紹介状拝見しましたけど、この先生のおっしゃるように後頭部が確認できないですね。無頭蓋症という判断に間違いないと思っていただいていいかと思います。」


やっぱり、誤診じゃなかったか。

奇跡は起こらなかったか…


「お部屋用意しますので、ご説明しますね。ご主人とお待ち下さい。」


夫の待つ待合室に戻り、やっぱりダメだったと伝えました。


「ダメっていうのは、同じ診断だったってこと?もう、決定なの…?どうしようもないのか…」


夫の心からの声が聞こえます。

これから説明があるとだけ伝え、2人で項垂れました。


説明に呼ばれ、エコーの動画と画像を見ながら、正常な場合との比較、症例の予後について丁寧に説明が為されました。


葉酸が足りなかったのが原因ですかという私の質問には、先生は即座に首を振って否定しました。私に対する気遣いかもしれませんが…

無頭蓋症のはっきりした原因は、分からないんです。1000人に1人の割合で、なぜか起こってしまう、事故のようなものです。確かに葉酸不足は原因の一つと考えられているけど、葉酸の必要量もその人と状態によってまちまち。たまたま今回こうなってしまったということだと。


加えて、お腹の中では元気に育つことができるから、ご両親の考えに寄り添うと。40週まで妊娠継続して、出産してその後の命を全うするまで見守りたいという希望ならそれも可能だし、残念だけどここで妊娠を中断して中期中絶することもできるとのことでした。


無頭蓋症の赤ちゃんの出産自体、剥き出した頭蓋骨が危険で難しいとコウノドリでサクラ先生が言っていた気がするので、40週まで妊娠継続するのもアリというのは意外でした。医療センターの先生曰く、出産自体に無頭蓋症であることは影響しないと。


ただ、ここで夫はいわゆる正期産まで妊娠継続する選択肢はあり得ないという意思を示しました。

助からないと分かっている赤ちゃんをお腹で育て続け、生まれても数時間でお別れしないといけない運命をわざわざ選ぶのは辛すぎると。


わたしも同意見でしたが、だからといって中絶を積極的にしたいわけではありません。両方、すごく辛い。こんな選択、なんでしないといけないのか。


でも、妊娠継続しないならもう中絶するしかないじゃないか…

予め、もし無頭蓋症と確定してしまったら妊娠継続は諦める。というのは、夫と話して決めていたことでした。


今回、この時点で妊娠継続を諦めますと先生に伝えました。ご両親の決定を尊重すると改めて先生は言ってくれた上で、中絶手術はこの医療センターでもできるし、産院に持ち帰って相談してもいいと言われました。


ここで先生が余談で話してくれたことが今でも印象に残っています。


仕事柄、何かしらの障害や異常を抱えた胎児ばかり見ていて、産まれても処置や治療が必要な子の診察ばかりしている。自分の子が特に何の異常もなく生まれたとき、異常がないこともあるんだな、と逆に驚いた。それぐらい、元気で生まれてくることは当たり前ではないのだといつも思っていると。


上のお子さんが元気でいることは、とても幸せなことですねと言われました。


辛く悲しく、もうこの子と一緒にあっちの世界に行ってしまいたいと一瞬思いましたが、うちには子どもがもう1人いるんだ。しかも元気に生きている子が。

しっかり育てないと…!!

上の子に救われたと思った瞬間でした。


この医療センターでの中期中絶手術を仮で予約して、産院での処置も平行して検討することにしました。