幸せの青い鳥は本当に最初から家にいたのかな、とふと思うことがある。
チルチルとミチルは青い鳥を探して様々なところを旅したけれど、結局は自分の家の鳥かごの中にいた。幸せというのは気がつかないだけで本当はごく身近なところにある。だから身近な幸せを大切にしなさい、という寓話として知られるメーテルリンクの『青い鳥』。
それではチルチルとミチルは旅に出る必要はなかったのだろうか。彼らは最初から家の中や身近なところに目を向けるべきで、青い鳥探しに費やした労力や時間は無駄だったのだろうか。

フィリピンの市場で夢のように美しい魚を見た。
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北海道の地味な色合いの魚を見慣れている私にとって、鮮やかな黄色と青のボーダーやピンクと水色のチェックの魚がこの世に存在すること自体、信じがたいことだ。ペットショップで売られている熱帯魚のような小魚ではなく、両手で抱えるほどのかなりの大きさで、しかも食用!
こんなにきれいな魚を食べてしまうなんてフィリピンの人はなんてもったいないことをするんだ!と憤慨しつつ、エメラルドグリーンにレモンイエローの水玉が入った魚をバケツに入れてもらった。3匹で80ペソ(約160円)。ワクワクしながら家に飛んで帰り、現地の友人に調理してもらう。2匹はスチーム、1匹は刺身に!さてその結果。……悪くはないけど、どちらかと言えば、うーん、やはり北海道の勝ちかな~。

けれど、それじゃあフィリピンのきれいな魚を見つけて食べてみたことは無駄だったのか、というとそれは違う。
きれいな魚を食べてみなかったら北海道の地味な魚の良さはわからなかったし、眺めるだけでその姿かたちに心が躍る魚との出会いというのはそれだけで人生の栄養だ。
青い鳥は旅に出たからこそ家にいたのだと私は思う。チルチルとミチルが自分たちのウチの世界しか見ていなければ、その身近な鳥が青いということも、その価値にも一生気が付かないままだっただろう。金持ちの国、死者の国、これから生まれ出る赤ん坊の国……、それぞれの国にはそれぞれの青い鳥がいた。それぞれの青い鳥を見てこそ、自分が求めている青い鳥が何なのか初めてわかるのではないかな、と青い魚の青い骨をかじりながらぼんやりと思う、フィリピンの夕暮れだった。

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ハロハロ日記は今回で最終回です。
皆さん、どうもありがとうございました!

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◆ゲストライター:かおり

kaori_lechon

寒さが苦手でたいてい南の国に逃亡している軟弱な道産子。初海外はマダガスカル。
その後JICAボランティア関係でパラグアイ、コロンビアとベサメムーチョな南米暮らしが続き、現在は流れ流れてフィリピンの田舎で日本語を教える日々。最近ハマっているモノはハロハロ(フィリピン風具沢山カキ氷)とレチョン(子豚の丸焼き)。
「ワイフ」や「ママ」とはほど遠い人生裏街道をクラゲのように漂いつつも、まだ見ぬ夫と我が子のためにSoLで修行しておこう、と決意する。