私がフルートと出会ったのは、小学校6年生の時だった。

何かのテレビ番組で、山形由美さんがフルートを吹くのを目にした。時に輝かしく、時にはそよ風のように優しい音色はもちろんのこと、美しい彼女がフルートを吹く姿はとてもさまになっていて、子供ながらに「素敵だなあ」と思った。

楽器を買ってもらったのだが、最初のレッスンは、無駄に息を吹き込みすぎて酸欠で倒れた。なんとか音が出るようになれば今度は息がもたず、「毎日腹筋30回ね」と先生に言われる始末。楽器を横に構えるので、もともと体力のない私はすぐに腕が疲れ、筋肉痛に。中学で吹奏楽部に入ると、夏休みの合宿はジャージを着てみんなで筋トレをすることから始まった。

フルートって、優雅な楽器じゃなかったの!?
山形さんは、あんな軽々と吹いていたのに!!

そう、フルート、いや管楽器は、予想以上に体を使う楽器だった。優雅な白鳥が水面下で脚をバタバタと動かしているように、綺麗な音色を支えているのは、腹筋の力だったのだ。
ちなみに私は、演奏会の最中スカートのホックがぷちんと飛んでいったことがあるが、それは腹筋に力が入りすぎたからではなく、贅肉のせいだろう。

オーケストラで1時間近くかかる交響曲などを演奏すると、まさに「全身運動」、息も絶え絶えだ。
それでもフルートは、ほかの管楽器奏者に言わせれば「本体が軽くて息も自由でラクでしょ」。
オーボエは息をあの細いリードの隙間にピンポイントで入れるのが難しそう、楽器の一部をスライドさせて音の高さを変えるトロンボーンだって大変そう、チューバなんてとにかく重そうだ。弦楽器だって、私は詳しくは知らないが、バイオリンを首で挟むのが疲れるとか、弦を指で押さえつけるからタコができるとか、いろいろ苦労はあるらしい。

もしあなたが、オーケストラの演奏会を聴きに行く機会があれば、こんな場面に出会うかもしれない。顔を真っ赤にして、今にも血管切れそうなオーボエ奏者やトランペット奏者。楽器を持たない指揮者も、ずっとぶんぶん腕を振り回しているので、1回の演奏会で2、3キロやせるという話を聞いたことがある。さらに、あまりに汗をかくものだから、ステージに扇風機を置く指揮者もいたとか。
そんなことを気にして演奏を聴いて、いや見てみると、なんだかムズカシソウなクラシックのコンサートも楽しくなるかも?

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◆ゲストライター:ズバーン

ズバーン

5歳と2歳の娘を持つワーキングマザー。 某マスコミ勤務。
子供がいたってキレイでいたい!とおしゃれな母を目指しつつも、6歳年上のオタク夫に感化され、腐女子への道まっしぐら。 流行のJ-POPやバラエティにはついていけず、アニメの話になると目が輝き、ポケモンの映画で涙する。趣味は昼休み中のデパート通い。