「精神的に向上心のない者はばかだ。」夏目漱石の「こころ」の作中で「K」が先生に向っていう言葉。作品の中でこの言葉…後にこの言葉をそのまま返される「K]がまだ元気だったころはてな語った言葉が千葉県の小湊にある誕生寺Templeにて言ったという設定になっている。
中学の時に「こころ」を読んで、高校の授業でも習ったのだが、当時は色々と考えさせられた作品であったことを思い出す。特に「精神的に向上心のない者はばかだ。」の一言は今でもしっかりと覚えている。そんな作中の描写が「誕生寺」であり、今回はじめて訪れる機会を得た。このお寺は日蓮上人の生家跡に建立されたと言い伝えられており、6年後の平成33年2月16日で生誕800年になるらしい。
日蓮聖人については、『立正安国論』の著者で、鎌倉時代の僧。仏教の宗旨のひとつ日蓮宗祖…くらいの歴史の教科書での知識しかないが、なかなか立派な佇まいのお寺である。暑いさなかに訪れたので、境内は閑散としており、セミの鳴き声だけが妙に耳についた。そして落ち着くのである。
小説は虚構の世界を繰り広げる産物であるが、この境内でもし件の言葉を言われたらと思うと、ちょっと「こころ」の先生の心境になれるかと思い、頭の中で反芻してみたキャッ☆まさに歴史の教科書位の知識しかない状況の私が、日蓮について語られ、夏の暑さの中で、難しい話はやめてくれよという感じも含めて、言われたとしたらどんな気持ちを有するのか・・・。まあ暑いさなかにそのような事を意味なく考え、小湊までやって来て実行している自分は生粋のバカなのかもしれないアホ
『精神的に向上心のない者はばかだ。』なるほど、ちょっと言われたらきついかもしれない。日頃から哲学や文学、人生を真剣に考えている輩であれば、かなりの心痛域に達するかもしれないが、私の様なにわか粋狂な文人気取りの人間には、あまり響かないなぁ、というのが正直な気持ちである。変に難しく考えないところが、自己の人格形成の根源なんだと、正論でもないが間違ってもいないと考え、速やかに誕生寺を後にした。総門を抜けると漱石の言葉も、誕生寺の厳かさも失い、頭の中には、道々に書かれてあった「おらが丼」という海鮮丼ぶりが気になっている自分がちょっと気恥ずかしくも愛しい歩く