309 高校受験の志願先変更

 平成6年の2月に充実した日々を送った博多と海沿いの新宮町に別れを告げて横浜に単身赴任することになった。子供が中3,小6と小1でありこの際、母の住む熊本の実家に家族を帰すことになったのだ。長男は高校受験の時で福岡から熊本へ受験の変更を行う必要があった。中学の担任の先生はのんびりした対応でどのような手続きになるのかさっぱり要領を得ない。やむを得ず、東京へ赴任する当日、親が県の教育委員会に乗り込み、直談判して窮状を訴えた。最初は福岡で受験し、その後熊本へ転校の手続きを行うのがよいだろうとアドバイスされた。しかし、熊本への引っ越しを教育委員会が知ってしまった以上、その手続きではだめで、福岡の志望校への受験願いを取り下げたうえであらためて熊本に出向いて受験願いを出せといわれた。「とてもそんな時間はない、今日東京へ出発するのだから、教育委員会同士で連携して手続きして欲しい」と私は粘った。そしてやっとのことで福岡から熊本への「志願先変更」の手続きを進めてくれることに落ち着いた。手続きの方向性に目途がついた時私が横浜への飛行機にのる一時間前となっていた。福岡県庁から博多の職場にいきそこで慌ただしく荷物をひきとる。私は急ぎ空港へ。車は家内が慣れない都会の道を新宮町まで運転した。

 志願先変更といっても熊本の公立高校のレベル等の情報は全くない。家内も親戚筋を頼って受験の相談をしたが役に立つ情報は得られない。長男には情報のない中でいちかばちかの受験を強いてしまった。合格できたから良かったものの本当に綱渡りの苦い経験であった。硬直した縦割り教育行政は転勤族にとっては辛い仕打ちであった。(平成6年2月)