291 余興白鳥の湖

 博多ではSI担当という部隊を任された。総勢14名のこじんまりした部隊で日頃より酒飲みを欠かさず気ごころの知れた気持ちの良いグループとなった。年末の旅行会に隣のSE担当と合同で生月島へ一泊でフグを食べにいくことになった。わがSI担当としては日頃お世話になっている隣の担当に感謝の気持ちを込めて宴会で出し物を全員でやることにした。M君にネタを考えるよう指示した。翌日白鳥の湖をやってはどうかと提案があった。「なかなかいい案だ。それで行こう。準備よろしく」一度会議室で皆で練習をした。まあやれそうだなということになった。口紅やら女もののブラジャーの手配が必要であった。営業担当のいつも愛想のよい女性に借りることにした。宿につき宴会が始まる。私達は出し物が終わるまでお酒は控えた。そして宴会が進んでいいタイミングで我々10名程が舞台裏にいったん消えた。会場は何事が始まるのかとシーンとなった。そして白鳥の湖の始まりである。Mの舞踊はロシアのバレエ団にも引けをとらない位美しい。そして綿をいれたブラジャーをした他のメンバが一斉に舞台に躍り出る。こちらはガチョウかダチョウの湖となった。やんやの喝采。宴会の盛り上がりは最高潮に達した。翌日の帰りのバスではことあるごとにこの出し物の話が語られた。

 

 数日後、借りたブラジャーをお礼とともに返した。その子は3年後に福岡で再会した時、「私結婚することになりました」と報告にきた。お相手はT大出のエリートであった。良かったと思うとともに、寂しさも感じた。

(平成4年12月)