304 南仏滞在(その4)

 会議後、タクシーでレボーという廃墟の町へ向かう。運ちゃんは先日、列車の時間に間に合わせるためにニーム駅まで高速を時速180Kmで飛ばしてくれた人だ。山の上に町の廃墟が広がる。家の軒先から真下は断崖絶壁である。谷間を縫うようにミラージュ戦闘機が轟音を轟かせながら飛び去る。大きな町なのに今は人っ子一人いない。谷底からは風がビュービューと吹き上がる。この風はミストレルというそうだ。

 バスでマルセイユを目指す。運ちゃんは途中でビールとサンドイッチの昼食。崖の上の荒れた古城が見えた時はバスを止めてくれた。サービス満点。

 マルセイユの港から船に乗る。イフ島でおりた。何とそこにはレミゼラブルのジャンバルジャンがいた地下牢が残っていた。海岸の綺麗な石を祈念に持ち帰る。空と海はあくまで青かった。  港に戻り、港の端にある海鮮料理の店に向かう。お客はほとんどいない。ブイヤベースとワインを注文。魚はほとんど白身の魚。スープとパンにワインの相性抜群である。程なくボーイが鍋を下げにかかる。「ノン、日本人は身も食べる」食べきれない位の魚の白身をもくもくと食す。博物館やデパート、物騒と言われる通りを散策する。「コリヤか?」「ノン、ジャポン」帰りの列車に乗る。アルル駅では朝レボーまで送ってくれた運ちゃんが待っていた「多分この列車だろうと待っていたのさ!」時計の針は夜の7時半を廻っていた。(平成3年6月)