283 YACA英会話

 熊本に赴任してまもなく、職場の近くのビルの8階にあるYMCA英会話学校に通いだした。先生はアメリカ人の休学中の女子学生。高校生の生徒さん達に混じって35歳の中年のおじさんが英会話を学ぶ。少々物足りない感じではあったが真面目に通う。暫くすると英語でのスピーチ大会をやるという。私は直ぐに手をあげた。題材は沖縄でウミヘビに遭遇して大変な目にあったことにした。漫画と原稿を準備した。原稿は先生のチェックを受けた。

 漫画を手にして皆の前でスピーチを始めた。皆まじめに聞いてくれた。ところがどうしたことか女の先生が突然お腹を抱えてけらけらと笑い出した。何がおかしいのだろうと不思議に思いながらも最後までスピーチを続けた。日本人たちはあまり表情を変えずに聞いてくれたのに、アメリカ人の女の先生はずーっと笑い転げていた。ウミヘビに突然出くわし、大慌ての私の姿が滑稽でたまらなかったのだろうと推察した。

(昭和60年8月)