SUBWAYで泣いた夜 | そこそこウケる、アメリカ留学日記

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※引き続き、そこそこ泣けるアメリカ留学日記です。





全てを英語の勉強に捧げていた。


しかし、来てから1ヶ月ほどで受けたTOEIC試験では一問もまともに解けず、先が見えないままただただ時間が過ぎていった。


老夫婦のホストファミリーはほとんど会話にならない自分のために毎晩頑張って英語を教えてくれていた。


そんなある日、ふと気付いたことがあった。


俺って平日はもちろん週末までいつも家でご飯食べてるから、この夫婦は2人きりの時間がほとんどないんだろうなって。


なんだか申し訳ない気持ちになってしまった。


そしてある土曜日の夕方、部屋から自転車を出して外に出た。


リビングで何やら作業をしていた2人は驚いてこんな時間にどこに行くのかと尋ねた。


俺は満面の笑顔で言った。






「フレーンヅ!ディナー!」





飛び上がるように驚いたホストマザーは、玄関の外まで出てくれて、「Enjoy!Enjoy!」と笑顔で手を振りながら見送ってくれた。


暗くなり始めたロサンゼルスの空の下、俺は懸命に自転車を漕いだ。


車社会のため交通の便だけは最悪だったこの家はどこへ行くにも一苦労だった。




そして40分ほど自転車を漕いで着いた目的地は、


SUBWAYだった。




友達と晩飯食べる予定なんてない。


今日はホストファミリーに気を使って一人ぼっちのディナーだ。


早い、安い、うまい、ヘルシー、そして何より俺でも注文できる!SUBWAY様だ。


でかいサンドイッチを平らげ、英語の勉強を始めた。






ロサンゼルスは昼夜の温度差が激しい。


アメリカに来る前にあるサイトで見た、“ロサンゼルスは年中20度くらいある常夏の街”だなんてデマ情報に騙され、コートやダウンを持ってこなかった俺は、いつも薄着で寒かった。


特に日本では真冬のこの時期はこちらも例外ではなく、夜の冷え込みは厳しいものがあった。


温かいコーヒーでも飲みたかったが、一日に使うお金の上限を厳しく制限していたこの時期は水を飲むしかなかった。


帰るには時間が早すぎるし、他に行く所なんてない。


歯がガチガチと鳴るほど震えながら単語を覚えていた。


名詞・・・・・・・・・noun!
動詞・・・・・・・・・verb!
形容詞・・・・・・・adjective!

英語力のない語学留学生が一番最初に覚えることになる典型的な単語だ。


つーか、、、俺はいつまでもこんな基礎的な単語を覚えるのに時間を費やしているんだ!




アメリカに来る直前に少しお世話になっていた英語の先生が言っていた言葉をこの時思い出した。


「・・・正直、いま語学留学に行くのは早すぎる。英語の基礎が全くできていない今の状態で行っても得るものは少ないと思うよ。」


その先生の言っていた言葉の意味が身にしみてわかったが、もう遅い。ここで頑張るしかなかった。






窓の外を見ると、隣にあるガラス張りのお洒落なレストランが見えた。


お酒を飲んで楽しく語り合っているそこのお客さん達がすごく幸せそうだった。


日本でも週末にはみんなもこうやって楽しく過ごしているんだろうな。。。


それに比べ俺はこんな所で何をしているんだ。


お金はない、友達も全然いない、おまけに肝心な英語は全然伸びない。


悔しくて、寂しくて、悲しくて・・・・・・・涙が溢れ出てきた。


こっちに来てからたまっていたものが全て出るようだった。


他のお客さんはいない。自分と店員2人の微妙な時間が流れた。


もう恥ずかしいもんなんてない。


忍び泣きが嗚咽に変わっていった。


単語帳はびしょびしょになっていた。








少しすると横で誰かが呼ぶ声がした。


こんな所で知り合いなんているはずない。


誰にも構わないでほしかった。


しかし、何度も呼ぶ声に反応して横を見ると、そこにSUBWAYの店員が立っていた。


そして、元気出せよと言いながら俺に特大コーラをプレゼントしてくれた。






この時の優しさがどれだけ俺に勇気を与えてくれたのか、この店員が知ることはないだろう。


そして、この時俺がどれだけ寒かったのかも、この店員が知ることはないだろう。









コーラを気合いで飲み干し、また40分かけて家に帰った時にはすでに悪寒がしていた。




でもお蔭様で、翌週の“憂鬱な月曜日の会話の授業”では迷うことなく、バカにされることもなく皆に伝えることができた。





「週末は風邪ひいてずっと寝込んでいました」と。