指導を始めて、今年で29年目になります。


現役と指導(特に現役の仕事がピークで疲弊していた)東京ー仙台を毎週往復していた20代。



現役を辞めてから指導に専念するも、素晴らしい海外の先生方から得たプロフェッショナルな価値観と、日本では趣味程度にしか扱われない「ただの習い事」と言う価値観の狭間にもがいていた30代(この頃の記憶は辛すぎて覚えていない事が多い)



東日本大震災を機に舞台復帰をして、生徒と踊りながら指導をしていた40代。12年ブランクがあっても再開出来るんだよ、と言うのをバレエから離れてしまった方々にも証明したかった時期でした。




そして50代後半になり、ようやく「自分自身の身体でテクニックを見せなくても、言語化して指導出来るレベル」に近づいてきました。




海外の年配の先生方から昔からよく言われていたのが


「あなたがパフォーマンスするんじゃない。生徒があなたの踊りのくせを真似してイマジネーションが育たなくなる。踊っている姿を見せるのではなく、言葉だけで指導出来てはじめて一人前の教師だ」


「的確な、しかし本当に少ない情報だけで十分。与えすぎるな。生徒がスポイルする」


とずっと言われていたので、今はだいぶ理想に近づけたように思います。


「踊らないで言葉だけで指導なんて…無理!」


と、若かった頃はその意味が全くわかりませんでした。


とにかく手当たり次第


「生徒たちには正解を早く教えないと!」


と自分が踊ってみせたり、情報を沢山与えていましたし、考える時間を与えずに正解だけを教えていた時代もありました。


正解を先に教えれば、一時的に形は整いますし、結果も早く出るかもしれません。


特に今の時代は「結果が全て」と言う風潮があり、その結果を苦労しないで短時間で得る「コツ」がもてはやされます。


SNSを見ればすぐに


「ピルエットを回れるコツ」

「ターンアウトができるコツ」

「表現が上達するコツ」

「コンクールで評価されるコツ」


など、ありとあらゆる有益な情報が手に入ります。


質問すれば、無料ですぐに答えてくれる人もたくさんいます。


その意味では、手探りの状態からは解放され、とてもお手軽な時代になったのだと思います。


コロナ禍以降のオンライン環境は、それをさらに加速させました。


以前は遠い存在だったスターや指導者にも、自宅にいながら気軽に質問ができ、指導を受けられる時代になりました。


けれどその一方で、自分で試行錯誤をしなくても済む分、正解を常に誰かに求める状態にもなりやすい。


いくら情報を得て実践し、その場では問題が解決したとしても、常に誰かに正解を求めて安心出来ない状況だと


「新たな壁にぶつかったとき」

「環境が変わったとき」


に他人がいないと解決出来なくなる…この危険性があります。


それを打破するには、最終的には自分の頭で考え、選び、踊ってきた経験なのではないかと、私は思っています。


正解をすぐ与えてくれる場所と、最終的には自分で考えて踊れる力を育てる場所は、似ているようで、まったく違う。


私のスタジオは後者のような場所でありたいと思います。


もちろん、今まで通り指導はしますし、情報も惜しみなく(しかし厳選して)提供します。


ただし、私に依存するような生徒にはさせない。


子育てと似ていて


「子離れ(生徒離れ)出来ないと結果的に子供(生徒)の自立を妨げることになる」


これが来年指導30年目を迎える前の私のテーマです。


左右木健一