今、企業において、
日本に基礎出願してから、基礎出願の出願日から1年以内に優先権を主張して
PCT出願(自己指定含む)をすることが増えています。


もし、学会発表してしまった発明で、
基礎出願が30条(新規性喪失の例外)を適用して出願した場合、
外国で特許が取得できるでしょうか?


以下の事例で、考えてみましょう。


1、日本に基礎出願(日本の学会発表から6月以内に出願)
2、PCT出願(基礎出願に対して優先権を主張して、基礎出願から1年以内に出願、自己指定有り)


(1)日本
 PCT8条2(b)の規定により、自己指定により、日本国に国内移行した場合、
 国内優先権を主張した出願になりますので、
 PCT出願が基礎出願から1年以内に出願している限り、
 新規性喪失の例外の適用を受けることができます(特許法44条2項)
 
 その場合、国内処理基準時が属する日後30日以内に、
 新規性喪失の例外の証明書面を提出する必要があります(184条の14)。


(2)欧州
 学会発表、刊行物公知によって新規性を喪失した発明を救済する規定がありません。
 したがって、欧州では特許がとれません。


(3)米国
 1年間のグレースピリオド(102(b))があります。これによって救済されます。
 救済を受けるためには、学会発表等で新規性を喪失した日から1年以内に米国出願
 又は米国を指定したPCT出願しなければなりません。
 日本と違って、優先権は効きませんから注意。


(4)韓国
 米国のグレースピリオド同様に
 全ての新規性喪失事由に対して適用されるということです。
 但し、期間は新規性を喪失した日から6ヶ月です。
 日本と違って、優先権は効きません。


(5)中国
 刊行物公知についてだけ救済される可能性があります。
 日本の学会発表は適用困難です。
 日本の学会は中国では適用対象になっていないからです。
 
 それから、中国では、中央政府の主管部署が主催した学会又は
 全国的組織の学会に限って例外が適用され、
 地方政府等主催の学会、全国的組織の学会から委託を受けた支部等が開催の学会等は適用外だそうです。
 ですから、中国に現地開発機関を持つ会社は学会の主催がだれなのか
 現地代理人と相談しなが進めることが必要です。
 
 期間は新規性を喪失した日から6ヶ月です。
 日本と違って、優先権は効きません。


(6)台湾
 試験又は研究について救済される可能性があるだけです。
 この試験又は研究に学会発表等が含まれるものであれば例外規定が適用されるようですが、
 解釈上、ちょっと難しいような気がします。
 この点の解釈も、それぞれのケースに応じて現地代理人のアドバイスを受ける必要があると思います。
 期間は新規性を喪失した日から6ヶ月です。
 日本と違って、優先権は効きません。

 
 従って、学会発表した場合、日本、米国、韓国で権利取得可能(台湾は微妙)ですが、
 日本以外は、優先権が利かないので、
 公知日から6月以内に、直接PCT出願をするべきです!

 もし、間違っていたらコメントいただけるとありがたいです。