ご無沙汰しておりましたショボーン

少しずつ春の気配が感じられる季節になりました。

 

草加パートナズ内科・糖尿病クリニックでは、年明けに院長より今年の当クリニックの重点目標が発表されるのですが、それを受けて自身の行動計画を立てています。

病院勤務の時には、そのような計画を立てることが疎ましく感じることもありましたが、今は大切な道しるべと感じています。

 

さて本日のテーマへ

糖尿病は血管を傷める病気であり、その「血管を傷める」が全身に起こってきます。人には太い血管と細い血管があります。以下、太い血管と細い血管に分けた合併症です。

太い血管(え・の・き)➡「え=壊疽、末梢動脈性疾患」「の=脳梗塞」「き=心筋梗塞、狭心症」

細い血管(し・め・じ)➡「し=神経障害」「め=網膜症」「じ=腎症」

 

                  

 

本日は糖尿病網膜症のお話です。

 

 

糖尿病はぜ、視力低下するのか?

 

 ①眼球の透明な組織が混濁する

眼球の透明性が低下する原因としては、水晶体が混濁する白内障、角膜が白濁する水泡性角膜症があり、さらに硝子体に出血が生じて血液がたまると、硝子体が白濁して見えにくくなります。

 

 ②網膜という光を感じる神経が破壊される

光を感じる神経である網膜の機能が失われる原因としては、網膜剥離と血管新生緑内障などがあり、糖尿病による直接的な2大失明原因となります。

どちらも糖尿病によって網膜の血管が損傷される「糖尿病網膜症」によって引き起こされます。

 

糖尿病網膜症は、どんな自覚症状があるの?

 

ほかの合併症と同様、初期段階では自覚症状はありません。症状が出現した時には網膜症が進行していることも少なくありません。緑内障に続き糖尿病網膜症が失明原因の第2位です。

 

 

糖尿病網膜症の特徴は?

 

<その前に、糖尿病のおさらいを>

食事は各細胞(60兆個)に栄養を補給するために必要不可欠です。血糖値が高いと、食べた栄養で血液中は糖分でいっぱいですが、細胞にうまく吸収できなくなってしまい、あふれた糖分は尿にたくさん出てしまう(各細胞は栄養が行き渡らず悪化すると体重が減少する)状態になっています。

 

<糖尿病網膜症の特徴と症状>

血液中に糖分が多い状態が続くと糖が血管に障害を与えるようになります。眼の(奥にある)網膜にある血管は細かいので特に障害を受けやすく、血管が詰まったり出血したりするようになります。もともとある血管が障害を受けて機能しなくなると、栄養分を届けられなくなるため、新しい血管(新生血管)が作られます。しかしこの血管はとてももろくて出血を起こしやすいのです。この状態が続くとようやく自覚症状として「視界がかすむ」「視力が悪くなった」などで初めて糖尿病網膜症に気づくことが少なくありません。

 

糖尿病網膜症はその程度(病期)によって受診間隔が違います。日頃から自分の目の状況を正しく知り、適切な受診を継続することが大事です。以下に、病期ごとの治療や受診間隔について示します。

 

1、 単純糖尿病網膜症

<状態>

最初に出現する異常は、細かい血管の壁が盛り上がってできる血管瘤や小さな出血です。タンパク質や脂肪が血管から漏れ出て網膜にシミ(硬性白斑)を形成することもある。

<治療>

・この時期では、眼科的治療は不要な場合が多い。

・治療の基本は「血糖管理」で糖尿病網膜症進展予防するためにはHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)7%未満を目標とする。

・急速な血糖管理は糖尿病網膜症の悪化を招くこともあるため、内科の医師と連携して緩やかな血糖値の改善を行う。

・眼科受診は中断しないことが重要

<受診間隔>

3~6か月に1回

 

2、 前増殖糖尿病網膜症

<状態>

・単純網膜症より進行している

・細かい網膜の血管が詰まり、網膜に十分な酸素や栄養が行き渡らず、足りない酸素を供給するために新しい血管(新生血管)を作り出す準備を始めている。

・この時期に「かすみ」「見えにくさ」を自覚することもあるが、全く自覚症状がないこともある。

<治療・検査>

・蛍光眼底造影検査(FA)を行い網膜毛細血管の閉塞、無還流領域を調べて以下治療を検討する。

・レーザー治療(網膜光凝固)眼底の奥で起きている新生血管発生の進行を予防する目的で行うもので、視力回復効果は期待できない。

※網膜の周辺部には暗いところで働く視細胞があるため、レーザーを行うと夜間見えにくくなる(夜盲)見える範囲が狭くなる(視野狭窄)ことがあるため注意が必要

<受診間隔>

1~2か月に1回

 

3、 増殖糖尿病網膜症

<状態>

・糖尿病網膜症の重症な状態です。

・新生血管が網膜のみならず硝子体まで伸びてくる。

・新生血管はもろく網膜や硝子体に出血することがある。

・硝子体に少量の出血があると、視野に黒い影やゴミのようなものが見える(飛蚊症)ことで気づくことがある出血量が増えると、墨を流したようなものが見える。

・何度も出血を繰り返したりすると網膜剥離を起こすことがある。

<治療>

・網膜新生血管を認めればレーザー治療を行う。

・網膜剥離や硝子体出血を認めれば硝子体手術を行う。

・硝子体手術の目的は出血で混濁した硝子体の切除、はく離した網膜の復位、増殖膜の切除による網膜牽引の解除、網膜虚血の改善です。

出血が多い場合や網膜剥離がある場合は、眼内にガスやシリコンオイルを置換することがある。置換した場合には手術後うつ伏せの姿勢を保つことが必要になる。ガスは1~2週間ほどで抜けるが、シリコンオイルは数か月後に再度手術で抜去する。

<受診間隔>

2週間~1か月に1回

 

 

重要!!

受診間隔はあくまで目安です。眼圧や眼底精密検査によって個人差があります。

また、単純網膜症がない場合にも、1年に1回は糖尿病連携手帳を提示して受診をしてください。また、糖毒性が強い時点の眼科診察は眼が浮腫んだ状態のため、数か月後の再診をお勧めします。

 

次回は糖尿病網膜症の予防についてお伝えします。