昨年の大晦日に行われた

日本ボクシング史上最大のビッグマッチ

井岡一翔vs田中恒成の試合は記憶に新しい人も多いだろう。


現在の日本ボクシングを牽引してきた4階級制覇王者の井岡一翔に対し、若くして日本ボクシングの記録を塗り替え、世界最速で4階級制覇を狙う田中恒成の激突。

普段格闘技をあまり見ない人でも見たのではないだろうか。



結果は周知の通り、井岡一翔の8RTKO勝利。

危険なタイミングで左フックのカウンターを被弾して意識が飛んだ田中を染谷レフェリーが救った。




この素晴らしい試合からすでに3ヶ月以上を経過した。

勝った井岡は統一戦へと思いを馳せ、敗れた田中は再起を誓う。




両者の差はなんだったのだろうか。

多くの人(関係者、ファン)から色々な意見が飛び交った。

その中でもキャリアの差、階級の壁は多く言われている。


ただ階級の壁に関しては明確に否定しておく。

Kazuto Ioka vs. Kosei Tanaka - CompuBox Punch StatsKazuto Ioka, a four-division champion and the defending WBO super flyweight king, thwarted Kosei Tanaka's attempt to become one thanks to his superlative boxing skill and powerful …リンクwww.boxingscene.com

boxingscene様より引用


このデータを見てほしい。

両者のパンチのヒット数がよく理解できると思う。

井岡の方が明確に多くのパンチをヒットさせている。

田中は井岡のパンチをたくさん被弾し、井岡にはパンチを当てる回数が少なかった。


これは階級の壁が大きな理由だろうか?

私は田中が仮に1階級上のバンタム級の体だったとしてもこれだけパンチを当てられずに、これだけ被弾すれば勝ち目がないと思う。

(まぁ、不意にヒットしたパンチでワンパンはある可能性はあるが、いずれにしろ再現性はないからそれに関しては考えないでおく)

強いて考えるのならばこれまで勢いだけで勝てていたが、階級を上げた事で通用しなくなったとは考えられる。

ただ私は相手が井岡一翔だから通用しなかっただけで

普通のランカークラスなら倒せると思う。

だから階級の壁は直接の敗因とはならない。



続いてキャリアの差だが、

これは半分正解で半分間違いだと思う。

キャリアの差があるな、と感じたのは

田中は負けを知らないが故に少々強引に行きすぎる場面がある。自らを危険に晒してしまう場面が多いように感じる。この負けを通してトップ選手にはあっという間に隙を見破られ、撃ち落とされてしまうと痛感したことだろう。



ただキャリアの差で語れない要素も多かった。

両者のヒット率にあるように、

井岡の方がパンチを当てるタイミングをよく分かっていて、田中のパンチがくるタイミングもよく分かっていたように思う。


タイミングとは格闘技における重要な要素である。

いくらスピードが速くても、慣れれば対応できてしまうし、いくらスピードが速くても隙を見せればドンピシャのタイミングでパンチを打たれる。


事実、田中のパンチは空を切ったり、ブロックされる事が多かった。

井岡に完全にパンチのタイミングを理解されてしまっていた。

逆に田中の隙をことごとく突くように井岡のパンチがヒットした。まるであなたの動きはわかってますよ、と言わんばかりに。


正直井岡の方が1枚も2枚も上手だった。

「ボクシング」という観点での実力差がやはりあったと言える。




戦前はスピードとパワーで田中が押し切って勝利するという予想が多かった。


ただ蓋を開けてみれば井岡の完勝だった。


井岡は我々にボクシングとはどういうスポーツで何が大事なのかを教えてくれた。

キャリアの差、階級の壁で片付けてはいけない。

井岡には勝利の為に重要なスキルが備わっており、

田中には足りなかった。

ファンにも気づいてほしい。


大晦日の試合は日本のボクシング界において色々な意味で重要だったかもしれない。



井岡一翔選手も田中恒成選手も両者の今後が非常に楽しみです!!!