それはあまりに呆気ないストップだった。
5R1分30秒、カウンターの左ショートアッパーを被弾した岩佐は後退し、連打をまとめられたところでレフェリーが間に入った。
これまで正規王者アマダリエフの猛攻を凌ぎ、反撃の機会を伺っていた岩佐からすれば初めてのピンチであまりにも呆気なく、あまりにも不完全燃焼なストップであった。
岩佐の5RTKO負け…………
日本のサムライが切り落とされた瞬間であった。
統一王者になるべく敵地ウズベキスタンに乗り込んだIBF世界スーパーバンタム級の暫定王者岩佐はストップの瞬間苦笑いを浮かべた。
実際、ストップのタイミングには物議を醸している。
まだまだやれたのではないか?と私は思う。
しかしながら、大半がアマダリエフのペースであり、
岩佐の被弾も多かった。
私が日本人だから、岩佐贔屓だから
まだまだやれたと思ったのかもしれない。
ただ嫌な予感がしたのは間違いなく、
少しだけ止められるかも?と思った。
本当に止められるとは思いもよらなかったのだが………
岩佐は恐らくあまりサウスポーが得意ではないのだろう。
スタイルとしても自分のパンチが当たり、相手は届かない距離をしっかり掴み、タイミングとキレのある左のパンチで相手を切り落とすスタイル。
サウスポー同士は対オーソドックスと比べて、距離が近くなりやすいのでその点に関してはアマダリエフのスタイルとは相性は決して良くなかったのかもしれない。距離が近くなると得意のジャブやストレートも速さ勝負になってしまい、スピードで少し上回るアマダリエフの方が優位な展開になってしまった。
センセーショナルなKO劇を披露した
IBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦のタパレス戦も被弾は多く、試合を通してみると非常に苦戦していたのは間違いない。
対してアマダリエフは行くところと引くところがしっかりしており、攻勢に出ても決して雑になることはなく、岩佐の左にも警戒し、反撃に出た岩佐のパンチが空を切る場面も多かった。
鋭い踏み込みと高精度なパンチ、バックステップやサイドへの動きも忘れずしっかりと自らの安全圏にも外れられる。
攻守のバランスが高いレベルで整った王者である。
ストップのタイミングは物議を醸していたが、
内容は間違いなく完敗だった。
貰い方や後退の仕方の印象も正直良くなかった。
止められても仕方ないかもしれない。
日本のトップが歯が立たなかったのだ。
ただ、どれだけ苦戦していても
ボクシングにはふとした瞬間に逆転は起こる。
虎視眈々と逆転への一手を狙っていた中でのストップは心情的には受け入れ難いものが確かにあった。
両者ともお疲れ様でした。