星の海に船を出す。


手放したはずの愛した記憶は

水面にいつも反射する。


掻き消した手のひらに新しい傷跡。


歌を歌って空を仰ぐ。


私の世界。


何一つ存在しない世界で、自我を確立しようとする私は、最早私ではない。


樹々が揺れるのと同じように

波の満ち引きと同じように

理由はない。


私が愛した貴方などいない。


貴方に愛された私などいない。


知っていたのに。


さよならが咲いた道に何度足を踏み入れて

振り返る愚かさ。


また陽が昇れば、上手く夢を見るために

早く夜に還ろう。


星の海の船を漕ぐ。


誰も私も居ない場所へ。


安らかな夜の中へ。