ああ、しまった。寝坊して急いで家を出た。駅に向かう道中でタバコを吸うことがいつもの習慣になっているが、

寝起きの喫煙はどうも具合が悪くなる。急いで火を消したその向かいには「禁煙」ポスター。

 

 電車に間に合わない。慌てて改札への階段を駆け上がる。やはりどうも具合が悪い。ふと横目に並走するエスカレーター、

薄い色の入ったサングラスをかけた男性、電話越しに大きな関西弁「おまえと一緒にすんなや」。

 

 ホームに着いた息の上がった大学生は電車を逃す。

去年撤去されたホームの灰皿近く、快晴の空、太陽の光をたくさん反射して眩しく少し暖かいベンチに腰を下ろす。

さっきの言葉を反芻する。繰り返し考える。

 

 そうか。僕もそうなのか、誰とも一緒にされたくない、比較されたくない、私自身以外のもの、人で私を定義されたくない。それは、何者かになりたくて九州の小さな街を一人飛び出してきた大学生という事実しかない私には厳しい現実であった。

やはり少し具合が悪い。

 

 「こんなのどこにでも大学生だ」。そう呟きながら、泥酔して無くした左耳のイヤホンの跡をなぞる。電車内はまだ来ない。