こちらの小説👇でもかなり良い役割を果たしていた作者。


の、本作は出来たてほやほやの最新作です☆



桜庭一樹著「名探偵の有害性」東京創元社より。


既にミステリー小説も手がけている作者。その作者が小説のタイトルとはいえ「名探偵」が「有害」とはこれ如何に🤔


本作の主人公はかつての名探偵 五狐焚風。「推理の風が吹いてきた」を決め台詞に、名探偵四天王の一人としてメディアを騒がせていました……20年前までは。

そしてその助手、だった女性 鳴宮夕暮。👆の表紙カバーを見ると、イケオジではあるものの草臥れた風情のオッサンに、ややシワの目立つ地味目なおばさんが、レトロな純喫茶をバックに並んで描かれていますが、それがこの二人。



本をひっくり返すと、小さいながら長髪の若者がいかにも挑発的な表情で笑っている姿と、その後ろを走って追いかける小柄でボーイッシュな少女が描かれています。おそらくは若い頃の二人でしょう。

それが今ではずいぶんなオッサンとおばさん……と思っていたら、就職氷河期で勤め先もなくずるずると求められるまま探偵を始めたともとれる表現が作品中ありました😅

て、ことは、この二人はわたしと同世代。つまり表紙のオッサンとおばさんは、鏡に映ったわたしの姿ともいえるかもしれません💦


20年前に探偵を引退し親から引き継いだ喫茶店を夫とともに経営していた鳴宮夕暮。

穏やかながらも退屈な日々を過ごしていたところに飛び込んできたのはかつての名探偵 五狐焚風。

そこで観せられたのは暴露系Vtuber "ころんちゃん" による「名探偵の有害性」という暴露動画😱

名探偵による冤罪や捜査ミスを暴くというその衝撃的な内容にSNSも騒然🔥

いわゆる炎上状態になったかつての名探偵とその助手は、自らの正しさを証明するため解決した事件の関係者を訪ねる旅に出ます。


まず会いに行くのは第一の事件「五狐焚風 最初の事件」の関係者、室田寧子。

今は市会議員になった彼女は二人を歓待しつつ、事件後の波瀾万丈の人生を打ち明けます。


図らずも事件をきっかけに医療界の闇と向き合うことになった彼女は、仕事を辞めその後は政治の道に進み、生命の尊厳を守ることを理想の旗に掲げ、平坦でない道のりを歩んでいたのです。

そんなこととはつゆ知らず、まだ若かった二人は名探偵の名声に酔い、事件から事件を追っていわば浮き草稼業のような生活をしていたのでした。


事件は解決したが、当事者を救うことはできなかったということもできそう😢

かつての名探偵は自らの「有害性」を自らの手で暴いてしまったのでした。


わたしたちの世代は、ちょうど社会構造の大きな転換点となった時代に就活の時期を迎え、あるいはホリエモンやひろゆきのように過剰適応し競争社会の「勝ち組」となり(五狐焚などの名探偵もそうだと言えるでしょう)。

あるいは「負け組」として社会の影に埋没し(助手の鳴宮はここだといえそう)。

そしてごく一部は、そのどちらでもないオルタナティブを求めて社会の融和を模索していたのでした🥲


若きの過ちに向き合い、かつての名探偵だったことの意味をあらためて自らに問う「名探偵」たち。

コミカルな内容ながら読者たるわたしも時々自らの越し方行く末を思い出し、目頭が熱くなること禁じ得ませんでした🥹


それでも見つける小さな一つの新事実✨

青春の終わりにはどうやらまた新しい青春が待っていたようです🤣








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