作者の馬伯庸(ば はくよう/マー・ボーヨン)は中国の作家。SF作家でもあります。👇のアンソロジーにも作品が収録されていますね。


ただし本作はSF小説ではなく時代小説。中国 明代を背景にした歴史ものです。



馬伯庸著 齋藤正高、泊功訳「両京十五日 Ⅰ 凶兆」早川書房より。


1というからには2もあります。「両京十五日 II 天命」ですがまだ手をつけてません。なにしろ長い小説です。今までも長い小説は読みましたがこれは更に長かった😵‍💫

全476頁。しかも2段組ですから👇 それでも最後まで読めたのはやはり中身がハラハラワクワクで面白かったため🤣



舞台は 明代 初期 👇 場所は南京。



元を北方に駆逐し、新たに明朝を立ち上げた洪武帝は金陵=のちの南京を本拠地とし、自らの王朝の都に定めました。

しかし洪武帝亡き後、その弟の燕王=のちの永楽帝が甥でもある建文帝に対して蜂起。

金陵にいる建文帝を滅ぼし、かつ永楽帝は自らの本拠地である北平を北京と改め遷都。

ここに明朝は北の都 北京と、南の都 南京の二つを持つことになったのでした💕


しかし四代皇帝 洪煕帝はこの北京を嫌い、密かに南京への再遷都を考え、皇太子(かつ本作の主人公)朱瞻基を南京に送り出します。

しかし四代皇帝は即位わずか一年で斃れ😢同時に皇太子暗殺爆破事件が発生🤯

辛くも難を逃れた朱贍基の元に届いた、急いで北京に帰還せよとの密書。

南に北に大混乱。誰が敵か味方かも分からないなか朱は北京への帰還を決意します。

お忍びで旅をする朱に(図らずも)同行するのは、腕は立つが無頼で酒浸りの捕吏 呉定縁。忠実で博学だが融通が効かない儒者の于謙、なお于謙は実在の人物です。そして何か秘密を抱えた女性の医師 蘇荊渓👩‍⚕️


いわば本作は南京から北京へ約1000キロのロードムービー。

曽祖父に似たのか激しい気性、かつ世間知らずの貴公子が一癖も二癖もある連中に揉まれ、人と社会の襞を知る。

あるいは立場も身分も違う4人が旅の過程でだんだん心を通じ合わせる。


作者には「沈黙都市」というSFの短編作品がありますが👇



これは言論が管理されたディストピア社会で「1984」を読もうとする話。

本国では作者は政治的な作家ともみなされているようです(政治的でない作家がいるかどうかは別にして😅)。


日本人には馴染みがあまりない明初の時代ですが、中国では割とよく創作の題材にされる時代のよう。

本作にも、よく知られた時代をネタに現代の社会を描こうとする狙いがあるのに、気づくことは難しくないかも。


物語の重要人物である無頼漢の捕吏 呉定縁と、身分は隠しても大帝国の皇太子である朱瞻基。逃げる途中で関係を聞かれ、「友だ」と答える展開が好物な方にはぜひおすすめです🐲








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