出版元の「旬報社」は主に労働問題を扱う硬派な出版社。「じゅんぽうしゃ」と読みます。「キネマ旬報」とは関係ありませんが、中村哲さんを扱った 映画 なら既にあったりして👇



冗談はさておき、佐高信 高世仁著「中村哲という希望 日本国憲法を実行した男」旬報社より。



既に大ベテランのジャーナリストである佐高信と、ビデオジャーナリストの高世仁との対談。


中村哲さんの著書や、実際に発した言葉を紹介し、それについて佐高信・高世仁の両者が論評を加えていくというスタイル。

中村哲さんだけでなく、佐高・高世両氏の思想や立場も語られます。そういう意味では3倍美味しいかも😋



日本国憲法を実行した、とは平和を実行してみせたということ。


国内に閉じ籠り口先だけで「安全保障」を語るのではなく、実際に紛争地域に赴き、交渉をして、人々の間に平和を実現する。それが日本国憲法を実行するということです🕊

のみならず、近年において日本が対外的に武力を行使したことがないという "イメージ" が(つまり実際の日本国は違う)中村哲さんの行動を影から支援する。つまり中村哲さんと日本国憲法はお互いにお互いを守る働きをしていました。


しかし小泉〜安倍政権の対外姿勢が日本のその "イメージ" を揺るがし、中村哲さんの身辺を危険にしたと本書は指摘します。

自衛隊の海外派遣は日本人をかえって危険にしたともいえることでしょう。


佐高信は中村哲さんの平和主義や反骨精神に注目し、高世仁はイデオロギーにこだわらない柔軟性に注目します。

それゆえに保守からも慕われていたということについては両氏の見解は一致していました。またその保守性ゆえにタリバンからも信頼を得ることができたと。


一方で佐高は安易に "右" に接近することには警戒をしています。

それはこれまで日本の平和運動を "左" が担ってきたことに対する当然の自負でしょう。その自負=誇りもまた大切な「保守性」といえるかも🌟


唸らされたのは、それまで医師だった中村哲さんがアフガニスタンに用水路を掘り始めたのは56歳の時だったということ😳

最初は何も分からず、娘の高校の教科書でサインコサインの勉強から始めたそうです。

とかく目の敵にされがちな「三角関数」ですが、やっぱり必要な知識であることが分かりますね😅💦

中村哲さんが亡くなったのは73歳のとき。人の生涯は長さではないこともよく分かるエピソードではないでしょうか🥹


本書中ちょっと残念なのは佐高・高世両氏の、女性の人権問題に対する感度の鈍さ。

もともと中村哲さん自身が女性の人権問題に冷淡であったことは👇でも指摘された欠点ですが


佐高・高世両氏まで無批判にそこに追従したのは悪ノリのような印象を与えました😡


佐高信は若者叩きもちょっと目に余りますね。もともとその気配はある人ですが。

直接ではないですが「まるで頭の古い親父の説教」と高世が遠回しに嗜めています😅


前述の映画「荒野に希望の灯をともす」の紹介をして本書は締めくくりです。

逃げ切るのではなく未来のために「一隅」を灯す人になれ、というのが本書からのメッセージでした🕯







本・書籍ランキング