国立科学博物館をモデルにした架空の博物館「国立自然史博物館」を舞台にしたミステリー。ちなみに作者は神戸大学理学部卒業。専門は地球惑星物理学と。



伊与原新著「博物館のファントム 箕作博士の事件簿」集英社文庫より。


ミステリーといっても血生臭い事件はなし。苦手な人でも安心して読めますね。


主人公は前述の国立自然史博物館の旧館、通称「赤煉瓦」に主のように "住みついて" いる自称・博物学者の箕作類。自称というのは、現在「博物学」という学問は実際にはほとんど存在していないため。

森羅万象あらゆる事物の分類をする「博物学」は学問の理想ではありましょうけど、実際にそんなことをしている(できる)学者はいないということでしょう。

逆にいえば、そんな肩書きをわざわざ名乗る箕作博士はよほどの変わり者。「オペラ座の怪人」に由来してつけられたあだ名がファントムでした🦹🏻‍♂️


そして新人研修を兼ねてこの「赤煉瓦」の整理整頓を命じられた女性新人研究員の池之端環👩‍🔬

あくまで命じられたのは「赤煉瓦」の整理ですが、いつの間にか赤煉瓦の主たるファントムの、下働きのようなことをなし崩しにさせられているのでした😅

とはいえ箕作は偏屈ではあってもなかなかに優秀な人類学者。データ処理は得意でも現場の経験は少ない環をそれとなくリードしてくれます。


博物館だけに事件は収蔵品にまつわるあれこれ。

いや、特に事件が起きなくても、事物の観察・分類はそれだけでミステリーといえるかも。

読んでいると博物館のことに詳しくなれるかもです😆


たとえば👇の小説にも出てくるダイヤなど宝石類の「呪い」の話☠️


盗難防止にあえてそういう物語を付与することもあるのだとか。


あるいは鉱物標本と宮沢賢治の詩とコレクション。または薔薇の名前とシェークスピア。

そんな物語を読んでいると、世の中の学問を理系と文系で単純に二分割してるのがもったいなくなってきますね😃



なんといってもお気に入りは👆の「異人類たちの子守唄」。

たとえ暴力と強欲が支配する世界であろうとも、人類の本質は決して残酷なものではない。そう信じさせてくれる良い短編でした🥲








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