なかなか衝撃的な一冊でもあります。特に先入観にこりかたまったわたしたちにとっては😢



岡真理著「ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義」大和書房より。


著者は早稲田大学教授。2023年10月7日以降のイスラエルによる一方的なジェノサイド(←本書を読んだ後にはもうこうしかいえないことがわかるでしょう)攻撃をうけて、京都大学・早稲田大学にて行われた緊急講義を加筆してまとめたのが本書です。


ハマースによる奇襲が発端だと思われがちなガザ地区攻撃ですが、著者はまずそれが間違いであることを指摘します。

いや、きっかけの一つであることは否定しませんが、むしろそれは本質から見て枝葉な問題であるということ💦

その発端はむしろ1948年のイスラエル建国←→パレスチナ側から見れば「ナクバ」(大災厄)と呼ばれる歴史からみていかなければならないと。


何となくユダヤ人とパレスチナ人が住んでいたところが分割されたみたいなイメージを持っている方がほとんどでしょうが事実は全く違います🤯

たとえていうなら……それまでユダヤ教徒のパレスチナ人とイスラムのパレスチナ人が仲良く(わたしたちがふだん隣人の信仰をわざわざ気にしないように)暮らしていたところに、いきなり近代的な軍隊がやってきて、「あなたは "ユダヤ人" だからここへ」「キサマはパレスチナ人だからあっちへ行け」と一方的に線引きをしたようなもの(あくまでわたしの比喩ですが)。

それだけでなく「やっぱり土地が足りないからパレスチナ人の土地をもっとよこせ」と脅すようなものでした(あくまでわたしの比喩です💦)。


それに抵抗してパレスチナ人が起こした民族運動がハマース。

ハマースは決してテロリストではない、というのが著者による説明です。


イスラエルがパレスチナに対してしてきたことはまさにジェノサイド(genocide)でありアパルトヘイト(apartheid)。


もともと政治的ユダヤ国家建国主義=シオニズムは正統派ユダヤ教徒には不人気で、しかもホロコースト(Holocaust)を経験したユダヤ人はイスラエルに批判的な意見の方が多いと。

その意味でこれは決して「宗教戦争」ではありません。

ただしシオニズムの支持派は富裕層が多いため政治的な権力が強く、特にアメリカではリベラルなはずの民主党ですらシオニズム支持は動かない状況です。

この辺は日本の「宗教右派」の問題とも似るのかも……😞


驚くのは "自殺" が絶対的なタブーであるイスラム社会であるに関わらず、パレスチナで自ら命を断つ人が増えているという話。



絶望の深さがわかりますが、このニュースに「日本と比べると数としては多くありませんが」とあるのも考えさせられました👆


そういえばガザのことを「世界最大の野外監獄」という(ただし著者はこの言葉には批判的)ことに因んで、👇の小説「東京都同情塔」のことを連想させられました。


難解な小説だと思っていたのですが、実はこの小説が書いていたのは東京じゃなくガザのことだったのかもという気がしました。

共感と言葉を奪われ、自らを壁のなかに閉じ込める。日本人はむしろ「加害者」側ですが、そこに暮らす人々はあんがい同じような立場にいるのかも😢

逆にいえば、無関心な態度をやめてよく調べ、それについて語り、自らの行動に壁を作らない。それが「監獄」から出る方法だともいえましょう🙂


衝撃的な事実をつきつけられることが多く、読んでいるとつらくなることもあるかもしれませんが、ぜひ読んでいただきたい一冊です。








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