生成AIが書いた文章が一部に引用されていることも話題になった第170回芥川賞受賞作品。
とはいえちょっとセンセーショナルに過ぎるなぁとも。実際は作中人物が生成AIで文章を書くシーンがあり、その文章が実際に生成AIで書かれているというだけの話です(👆太字部分など)
ただし選考委員の平野啓一郎さんは、今後実際に生成AIが小説を書くケースも出てくるだろうと指摘していました📝💻
九段理江著「東京都同情塔」新潮社より。
なおカバーのこれ、イラストみたいに見えますが写真です📸
実際には建設されずに終わったザハ・ハディドによる国立競技場🏟が建設され、東京オリンピックが延期されずに予定通り開催された、もう一つの日本、東京。
ここに更に建設されようとする新しいランドマーク。その名はシンパシータワートーキョー。
主人公 牧名沙羅はその建設受注を狙う野心あふれる建築デザイナー。
シンパシータワートーキョーとは犯罪を犯した人々を収容する、要は「刑務所」😱
つまりこの世界の "東京" は、犯罪者を同情されるべき人と定義し、刑務所という言葉を避け、新たに清潔で快適な更生のための施設 シンパシータワートーキョーを街の中心に建てようとする "もう一つ" の東京でもあるのでした。
主人公は受注に意欲を燃やしシンパシータワートーキョーの理想を高らかに歌い上げると同時に、(実は犯罪被害者であったことを隠しているため)その理念に内心では嫌悪感を抱き、その塔を(皮肉を込めて)東京都同情塔と呼ぶのでした。
()や " " が多くて恐縮ですが、ロジックが難解でなかなか一筋縄では捉えられない作品ということです💦
人々の言葉を奪うのは過剰な "ポリコレ" や "コンプラ" だけでなく、惰性で続く消費社会、あるいは膨大に流される情報、そして発達したAIなど。
シンパシータワートーキョーの理念のバカバカしさもそうですが、反対派が犯罪者にかけるヘイトスピーチも耳を覆うべきものがあります。それは果たして「どっちもどっち」という話なのでしょうか。
他人との同情を閉ざし、快適で清潔な "刑務所" に暮らしているのは他ならぬ私たち。
難解なラストは未来への希望かそれとも永遠に続くディストピアか。読む人によって分かれそうでもあります。
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