👇で紹介されていた鶴彬ほかを題材にした連作短編集。


ただし主人公は鶴彬たちではなく、それらの人々を陥れた内務省の "クロサキ" 参事官。
かの悪名高き「治安維持法」を盾に数多の善良な人々を陥れた特高(特別高等警察)です🥶


柳広司著「アンブレイカブル」角川書店より。暁の荒野に立つその後ろ姿は誰のものでしょうね。


本作の登場人物はまずプロレタリア作家の小林多喜二🦀
そして前述の川柳作家 鶴彬👆
あるいは良心的な誌面を最後まで心がけた良識ある雑誌人たち。
そして在野の哲学者 三木清です。

いずれも "クロサキ" に陥れられ、終戦を前に(あるいは終戦後でさえ😡)儚くかつ貴重な生命を散らした人々です😢
にもかかわらずタイトルは、アンブレイカブル=敗れざるもの💪

クロサキのことをそう呼んでいるわけではもちろんなく、敗れざるのは死んだ小林多喜二であり鶴彬であり。
そこに言論や思想の力を信じる作者のスタンスが生きているといえるでしょう。

「罪は捜すな、仕立て上げろ」の言葉通りに弾圧仲間😳の憲兵でさえドン引きするほど強引な取り締まりをする特高とクロサキ。

そのクロサキもかつては三木清の本を愛読した哲学青年でした。
官僚となり己の名を捨て、良心も捨てて、ナワバリ争いと上への忖度。法が本来想定していなかった領域まで権限の手を伸ばしていきます。

読んでいると時代も舞台も違うながら👇が見せた官僚機構の 二つの顔 を思い出さずにはいられませんでした😢😡


隠蔽を拒み、悩み、自ら命を絶った官僚と、恥じることなく出世のため政治家に擦り寄った官僚。

真にアンブレイカブル=敗れざるものなのはどちらか、作者は本作でそれを鋭く問うているのです。








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