普段はミステリーの執筆や翻案をメインにする作者。ミステリー・SF・伝奇小説は自らが成したい三大ジャンルだそうですが、本作はそのうちの一つ、時代伝奇小説ということになりますね。



と、いうわけで芦辺拓著「大江戸奇巌城」早川書房より。



作者自らがオーシャンズ11から想を得たという本作。主人公は5人の女性。

正面、赤い服を着て刀を振りかぶっているのが男装の武芸者 野風⚔️

その後ろ、同じく刀を持っている緑の服が、学問を志し女人禁制の学塾に通う浅茅🖌

眼鏡を掛けた女性が蘭学に詳しいちせ👓、ピストルを構えたお姫さまがお家騒動から逃れて市井に暮らす喜火姫🔫

一番後ろで洋風を着てサーベルを構えるのはオランダ人の父と日本人の母を持つアフネス🗡


個性豊かな、その分だけ江戸の封建社会では生きづらい5人。

ひょんなことから5人巡り合う……ところまでが物語の前半部分。

後半部分がその5人が江戸を揺るがす陰謀に巻き込まれ、そして鮮やかに解決する冒険活劇となります。



あくまで架空世界の江戸ながら、時代は徳川家慶の治世の初期。松平定信による "寛政の改革" が終わり、水野忠邦の "天保の改革" が始まる前。"大塩平八郎の乱" の直後と考える方がわかりやすいかも。


登場人物も平田篤胤や佐藤信淵やその周辺の人物。

あるいは遠山の金さんこと遠山景元🌸、そして妖怪……鳥居耀蔵😱


劇中、平田篤胤・佐藤信淵の妄想めいた排外思想・日本中心思想を諌める、柔術家にして天文学者の 片山松斎



あまりに出来すぎた人物なので架空のキャラクターかと思ったら実在する歴史人物でした。

裏主人公ともいえるこの人物の活躍に、最近の日本中心主義の跋扈を憂える作者の本懐が見えるようです🙂







本・書籍ランキング