初読みではないけれど読者ってほどでもない作家さん。それでも手に取ったのは地元の人形も出てるという話を聞いたから。
津原泰水著「たまさか人形堂ものがたり」創元推理文庫より。
なかなか良い小説でした。作者は器用な才人というイメージで筆が走りがちな印象もありましたけど、本作はしっとりとしていてじっくり読めました。
ジャンル的にはミステリーということになるのでしょうか。会社をリストラされ、祖父母がかつて営んでいた人形店の再興を(むりやり)任された主人公の澪(みお)。
人形は素人ながら、老若二人の職人・師村👨🦳と冨永🧑を何とか雇い入れ、修復を主軸に細々と商売を営む毎日です。
店には毎日、何かしらの人形が運び込まれ、そして人形には何らかのドラマが必ず込められています。
それを解きほぐすのもまた人形店の仕事……ということになるのでしょうか。
旧家にまつわる殺人😱事件から小さい子どもの夢遊病まで。人はなぜ人形を作るのか、という根源的な疑問も含めて心の謎を解いていきます。
やがて明らかになる師村の抱える過去……とはいえそれも物語の中に優しく抱きとめられていくのですが🙂
もしかしたら人形はあの世とこの世を繋ぐためのものなのかも……。
本書は以前、文春文庫から出版されていた内容に書き下ろしを加えたもの。また雑誌連載時とは内容に若干変化があるそう。
未解明な謎が含まれていると思ったら続編があるようでした。取材も綿密で良い読書をしたという感じです。
〈追記〉作者の津原泰水さん。亡くなられたようです。何たる偶然。合掌🙏
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