買ってすぐにしまったー!と思ったのは内容じゃなくてシリーズの3作目だったから。こういうのはできるだけ1作目から読みたい方😅


松村栄子著「花のお江戸で粗茶一服」ポプラ文庫より

作者の松村栄子は「至高聖所」で芥川賞受賞。趣味が茶道で、夫が万葉学者らしく。なるほど。本書のバックボーンもそこにありますか🍵

主要な登場人物は巻頭に紹介があり、前2作での出来事はストーリー中でざっと説明されますので3作目から読んでも戸惑うことはありません。てかこの一作だけでも充分に自己完結してますし

主人公 友衛遊馬は茶道🍵・剣道⚔・弓道🏹の三道を伝える伝統武術 坂東巴流の家元の子
とはいえ道場だけでは食べていくのもままならない零細流派
加えて厳しい家風にも反発し、大学進学も諦め京都に出奔
しかしそこで出会ったひょんな縁から比叡山(←読んでないから分からないけどニュアンス的に本山でなく塔頭の方?)にて2年の修行生活を送ることになり、無事に東京の実家に帰ったところからが本書の始まり

高卒の資格で就職もままならず、東京スカイツリーの建設現場で守衛のアルバイトをしながら、家元たるべく茶道・剣道・弓道の修業を続けます
京都から追いかけてきたヒロインの成長をまぶしく感じたり、弟の出来栄えに感心したり嫉妬したり、定まらない自分の行末を歯がゆく感じたり
少しずつ完成していくスカイツリーが、主人公の成長とシンクロして爽やかな青春小説と思いきや……


……終章で襲いかかった東日本大震災の脅威😱

幸い主人公の周辺に人的な被害はありませんでしたが、単純に上に伸びていくだけではない人間の運命に思いを馳せずにはいられなくなります

主人公のトレードマークたる紫に染めた髪の毛(ナウシカのパロディシーンがある😃)や、決まらない仕事。あるいは京都の宗家巴流との複雑な人間関係など
全ての伏線を回収し、家元を継ぐ覚悟を決める主人公の姿は微かに苦味も添えて爽やかな読後感です
時代設定もストーリーも違うながら、藤沢周平の「用心棒日月抄」シリーズに雰囲気が似てるといえるかも

「関」に始まり、「関」に終わる。文字通り大団円を迎えたストーリーに時々挿入された茶語・禅語が個人的にもっとも興味深いところでもありました😆