ポプラ社の「コミック版 世界の伝記」シリーズ。最近は女性の伝記にも力を入れています。以前紹介した「メアリー・アニング」も良かった👇

映画 「未来を花束にして」 の元になった……ということくらいはかろうじて知ってましたが、イギリスの女性参政権運動家「エメリン・パンクハースト」その伝記マンガです



漫画 瑞樹奈緒:シナリオ 村上リコ:監修 佐藤繭香「コミック版 世界の伝記 エメリン・パンクハースト」ポプラ社より

作中かなり激しい政治運動シーンが出てきます。またそれに対抗する政府側の弾圧行為のシーンも生々しく表現されています
子ども向け学習マンガとしてはかなり踏み込んだ内容

正直、大人しい日本のデモを当たり前のように思っていると、他人に直接被害を与えるのは避けているとはいえ、投石や放火を伴う政治運動に違和感を持つ人もいるかも🔥
どちらかといえば日本の大人しい政治運動の方が珍しいケースだということは頭に入れておきたいものです

女性参政権という成果を出したのは「過激な」運動の方。もちろん日本の運動もそれはそれで評価されるべきですが


主人公のエメリン・パンクハーストは1858年の生まれ。日本ならちょうど幕末のころ。アメリカならちょうど南北戦争のころといえますか
アメリカの奴隷解放宣言に影響され、自由や平等といった価値観に関心を持つことになりました

成人して弁護士の夫との間に5人の子どもをもうけ、その子どもたちも後に有力な活動家メンバーになります

当初は救貧委員や戸籍係など貧しい人々を支援する仕事に付きますが、その過程で女性が様々に受ける不利な扱いに疑問を覚えたことが、女性社会政治連盟WSPU設立の動機です


女性の就学をめぐるこういう話☝️最近の日本でもニュースになりましたね

当初は支援してくれた次女や三女の離反、長男・次男の早逝という葛藤を経ながらも目的のため粘り強く運動を続ける主人公

厳しい弾圧に耐え、ついに女性参政権を獲得するきっかけが第一次世界大戦(総力戦)というのは皮肉な成り行きといえるかも😢

女性の社会進出を促すという視点から戦争協力に踏み切ったことは当時の支援者を失望させました。また、現代も賛否両論引き起こす要因になっています

ですが、信念をもって声を上げ、行動して行くことが「当たり前」を変える力になる……ということこそが本書からのメッセージ
まだまだ差別や格差が根強い日本社会では更にそのメッセージが有効でしょう

わたしが子どものころ、女性の伝記といえばお姫さまみたいなのばかりでした。こういう伝記が増えていくことを心から希望します