講談社現代新書「トルコ民族主義」坂本勉著。旧版の表紙が懐かしい。


図書館から借りました。

分かっているようでわからない国トルコ🇹🇷 古くはビザンチン帝国。現代はイスラム教と世俗主義。世界遺産のカッパドキア。それから……民族主義!?


中央アジアのイメージが強いトルコ民族ですが、その発祥地は日本人にむしろ馴染み深いモンゴル高原。
かつて中国の史書に突厥や丁零と書かれた北方遊牧民の末裔。とっけつ、トルコ、とっけつ、トルコ、うん、似てる?

世界を股にかけ勢力を拡大し、様々な国と地域に言語・文化の痕跡を残したあと、紆余曲折の末、現代の中央アジアの地に落ち着きました。

そのためトルコ “系” 民族はアジアからヨーロッパ・バルカン半島まで驚くべき広さにまたがります。

とはいえ、文化の寛容性・習合性ゆえかトルコ系民族は地域と時代によって様々な顔を見せます。
加えて、スンニ派とシーア派というイスラムの宗派争い。あるいはイラン・ペルシャ🇮🇷系との複雑な関係。さらに加えてロシア🇷🇺からの圧迫。
これらの要素が国際政治の流れと相まって、時には統一を志向し、時に分裂を志向するのがトルコ民族主義といえそうです。

現代はトルコ一国を支えるのに精一杯で、拡大主義をとる余裕はないだろうというのが本書での作者の見立て。
ヨーロッパとアジアにまたがる地理的条件のもと両地域の橋渡しをする地域大国化を目指しながらも、そのこと自体が分裂の芽を含むとも。

長い伝統を持ち、市民革命の歴史はないながらも、民族主義によって一定の近代化を成し遂げた歴史はどこか日本🇯🇵に似てるかも。

本書は1996年の発行。現代トルコの政治状況を思えばもう少し新しいデータが欲しいと感じないわけには行きませんが、それでも考えるに足るだけの情報は書かれているといえそうです。