はじめに、メタ発言をさせてもらう。
語り部が犯人という小説は極めて希少だと思う。
なぜなら、語り部は犯行時の心境を語らなくてはいけないから。
起こったことを全て語るのが語り部の義務であり、
その過程を省いてしまうのは、明らかなルール違反だ。
ただ、この小説は例外にあたる。
犯行が終わったところからこの小説が始まったのだから。
ゆえに、私は事件後の経緯をそのまま語ってきただけで、
今までの地の文に嘘偽りが全くないことをここに誓う。
――――ただ、どっちともとれるような曖昧な表現はしていたけど。
「最初に言いたいことが一つある。君、推理小説の読み過ぎだよ。
「君の家で一度言ったけど、今は別の意味を込めてある。
「『現実は小説(フィクション)のようにはならない』
「あとは、『事実は小説より奇なり』とか。
「これは、そのままの意味だよ。小説を読み過ぎた君に今後の教訓として教えてあげたかったよ。ただ、人の弱みを握ってさえいなければ…の話だけど。
「殺人犯相手に弱みを握るなんて馬鹿のすることだよ。弱みを握るだけで殺されるに値するんだから。
「次からは、気をつけようね。
「さて、何から話そうか。犯行動機? それとも気の利いたトリック? そんなことより君の間違えについて話そうかな。探偵役を名乗り出ながら間違えた推理をするなんて笑っちゃうよ。
「失笑だけど。
――――――――――――――――――――――――――――――――
少なからず高揚してきた。
やはり絶対的立場が上というのは気分がいい。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「『探偵は間違えない』、フィクションにおいては常識だよね。
「なのに君は失敗した。
「さて、何を間違えたと思う? 推理だと思う?
「正解は『死因』だよ。発想の転換。根柢の部分から間違っていたら、推理も何も無いね。
「死体には刺し傷があって、血も出ていた。でも、どうして刺殺が死因だと決めつけられる?
「こうは考えられないかな?『死んでから刺された』と。
「さすがに、どっちが正解で、どっちが不正解なのかはその時点では分からないけどね。
「ただ、君は早計にも刺されて殺されたと勘違いした。
「殺されてから刺されたとすると君が提示した謎が解ける。
「一つ目、返り血の問題。
「死体を刺した時、その時の出血量は生きている人を刺した時よりも少ない。
「――――――なぜか?
「『脈が無いから』
「心臓からポンプのように血液が送られていなければ出血量が少ない。
「圧力とかの関係で少しは出るんだけどね。
「血の勢いが弱く、量が少ないければ血に触れずに人を刺すことだって難しくなかったよ。
「二つ目。被害者が警戒しなかったことについて。
「これは、死因が『刺殺』じゃないって考えれば簡単だよ。物理的じゃなくて間接的に殺せばいいんだから。
「殺した張本人の私だから言えるけど、二人の死因は『毒殺』。正解は『毒を盛って殺したので警戒出来なかった』。
「いろんな謎が霧消したかな? まあ、見事な推理を決めているように見えるかもしれないけど、ぶっちゃけこれはただの自供だからね。
「犯人が、ベラベラと種明かしとか、どんな推理小説だよって。
「まあ、こんなの小説なわけが無いけど。
「―――あるとしたら、戯言だったり。
――――――――――――――――――――――――――――――――
そこで、彼との会話を思い出す。
『どっかの誰か』と名乗っていた彼を。
その時、必死で悶えていた少年が一気に弱ったのを足もとで感じた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――え、そろそろお別れの時間かな?」
「行ったらっしゃい、逝ってらっしゃい
「じゃあ、バイバイ」
―――プツリと何がが途切れる音がした気がした。
語り部が犯人という小説は極めて希少だと思う。
なぜなら、語り部は犯行時の心境を語らなくてはいけないから。
起こったことを全て語るのが語り部の義務であり、
その過程を省いてしまうのは、明らかなルール違反だ。
ただ、この小説は例外にあたる。
犯行が終わったところからこの小説が始まったのだから。
ゆえに、私は事件後の経緯をそのまま語ってきただけで、
今までの地の文に嘘偽りが全くないことをここに誓う。
――――ただ、どっちともとれるような曖昧な表現はしていたけど。
「最初に言いたいことが一つある。君、推理小説の読み過ぎだよ。
「君の家で一度言ったけど、今は別の意味を込めてある。
「『現実は小説(フィクション)のようにはならない』
「あとは、『事実は小説より奇なり』とか。
「これは、そのままの意味だよ。小説を読み過ぎた君に今後の教訓として教えてあげたかったよ。ただ、人の弱みを握ってさえいなければ…の話だけど。
「殺人犯相手に弱みを握るなんて馬鹿のすることだよ。弱みを握るだけで殺されるに値するんだから。
「次からは、気をつけようね。
「さて、何から話そうか。犯行動機? それとも気の利いたトリック? そんなことより君の間違えについて話そうかな。探偵役を名乗り出ながら間違えた推理をするなんて笑っちゃうよ。
「失笑だけど。
――――――――――――――――――――――――――――――――
少なからず高揚してきた。
やはり絶対的立場が上というのは気分がいい。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「『探偵は間違えない』、フィクションにおいては常識だよね。
「なのに君は失敗した。
「さて、何を間違えたと思う? 推理だと思う?
「正解は『死因』だよ。発想の転換。根柢の部分から間違っていたら、推理も何も無いね。
「死体には刺し傷があって、血も出ていた。でも、どうして刺殺が死因だと決めつけられる?
「こうは考えられないかな?『死んでから刺された』と。
「さすがに、どっちが正解で、どっちが不正解なのかはその時点では分からないけどね。
「ただ、君は早計にも刺されて殺されたと勘違いした。
「殺されてから刺されたとすると君が提示した謎が解ける。
「一つ目、返り血の問題。
「死体を刺した時、その時の出血量は生きている人を刺した時よりも少ない。
「――――――なぜか?
「『脈が無いから』
「心臓からポンプのように血液が送られていなければ出血量が少ない。
「圧力とかの関係で少しは出るんだけどね。
「血の勢いが弱く、量が少ないければ血に触れずに人を刺すことだって難しくなかったよ。
「二つ目。被害者が警戒しなかったことについて。
「これは、死因が『刺殺』じゃないって考えれば簡単だよ。物理的じゃなくて間接的に殺せばいいんだから。
「殺した張本人の私だから言えるけど、二人の死因は『毒殺』。正解は『毒を盛って殺したので警戒出来なかった』。
「いろんな謎が霧消したかな? まあ、見事な推理を決めているように見えるかもしれないけど、ぶっちゃけこれはただの自供だからね。
「犯人が、ベラベラと種明かしとか、どんな推理小説だよって。
「まあ、こんなの小説なわけが無いけど。
「―――あるとしたら、戯言だったり。
――――――――――――――――――――――――――――――――
そこで、彼との会話を思い出す。
『どっかの誰か』と名乗っていた彼を。
その時、必死で悶えていた少年が一気に弱ったのを足もとで感じた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――え、そろそろお別れの時間かな?」
「行ったらっしゃい、逝ってらっしゃい
「じゃあ、バイバイ」
―――プツリと何がが途切れる音がした気がした。