血と地に伏せている彼らは少年の両親。
はっきり言って想像はしていたが、死体を見て平気そうだったので、
『やっぱり違うんじゃないか?』という疑惑があった。

……でも、これが真実。
疑惑が確信に変わり核心に迫った瞬間、全身の鳥肌が立ったような気がした。

『両親が殺された現場に偶然居合わせた息子。息子は無残に殺された両親を見つける。』

――――――なんという、悲劇的な状況(シチュエーション)。

「……だから、お姉さんが立ち向かったって敵うわけがないんだよ」

途中、何を言っていたのかは聞いていないが、
私にはこの子の父親を腕っ節だけでは倒せないということか。

「もっと言うと二人同時にここで倒れるのもおかしい。二人は犯人から逃げなかったのか?
どうしてここで殺された? 血はここにしかないから、ここで死んだのも確実…」

そこでようやく私が口を開く。
「じゃあ、帰らせてよ。たくさん私が犯人じゃない理由を挙げたんだから、もういいでしょ」
我ながらわがままだ。
「そういうわけにはいかないんだよ、お姉さん。『論より証拠』、あんたがここにいるという揺るがない『証拠』が全ての『論』をひっくり返す。つまり、常識で考えていてはいけない。全ての謎をまとめて解決するウルトラC級の裏技、即ち――――」

そこで、溜める。

「トリック殺人!」
……テンションマックス(笑)
ちょっと引いた。

「でも、聡明なお姉さんにはわかるんだけどトリックなんて小説みたいにうまくいかないよ。
君、推理小説の読み過ぎじゃない?」
自分のことを『お姉さん』というのは、未熟で幼くて、何より礼儀を知らない子供に対するマナ―です。
「かもね。まあ、お姉さんが怪しいのは確かなんだ。トリック云々は後で考えるとして一つ提案がある」

――――提案
「何?」
「『お姉さんがここにいる』という事は警察に知らされてお姉さんにとって都合の悪いよね?」

私は身構えた。脅される…
「このこと誰にも言わないから、お姉さんの家に行っても良い?」

予想通り、最悪で――――――そして、最高の状況(シチュエーション)になった。