2026年6月10日作成

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表題通り、囲碁や将棋に更に通じるために、温故知新の観点で、棋士の過去の名言を集めて、ご紹介しています。

今回の名言:碁は宇宙だ。 BY 呉清源棋士

呉清源棋士(1914–2014)は、20世紀囲碁界の絶対的巨人と称される人物であり、彼の残した「碁は宇宙だ」という言葉は、単なる比喩ではなく、彼の人生観・哲学・棋風のすべてを凝縮した象徴的な名言である。この言葉を理解するには、呉清源棋士が生きた時代背景、彼が囲碁に見出した“調和”の思想、そして現代AI時代における再評価までを視野に入れる必要がある。

まず、呉清源棋士が囲碁界に登場したのは、日中関係が緊張し、世界情勢が不安定だった1930年代である。彼は中国・福建省に生まれ、幼少期から天才と呼ばれたが、10歳で日本に渡り、瀬越憲作に師事した。当時の日本囲碁界は「本因坊秀哉棋士」や「木谷實棋士」らが活躍し、伝統と格式が重んじられる世界だった。そんな中で呉清源棋士は、従来の定石や価値観を根底から揺さぶる革新的な思想を持ち込んだ。それが後に「新布石」と呼ばれる布石革命である。

呉清源棋士は、囲碁を「局地戦の積み重ね」ではなく、「盤全体の調和を追求する芸術」と捉えていた。彼にとって、碁盤は単なる19×19のマス目ではなく、無限の可能性を秘めた“宇宙”そのものだった。黒と白の石が互いに影響し合い、広がり、収束し、また新たな関係を生み出す。その動きは、まるで銀河の形成や宇宙の膨張を思わせる。呉清源棋士は、囲碁の中に「宇宙の法則」を見ていたのである。

この思想は、彼の棋風にも色濃く表れている。呉清源棋士の碁は「調和」「自然」「大局観」と評され、局地的な得失よりも全体の流れを重視する。たとえば、彼は序盤での小さな利益を追わず、盤全体のバランスを優先した。これは当時の囲碁界では異端とされ、批判も多かったが、結果として彼は「十番碁」でほぼすべての強豪を圧倒し、史上最強の名を確立した。

「碁は宇宙だ」という言葉は、単に囲碁の広大さを表すだけではない。呉清源棋士は、囲碁を通じて「人間の心のあり方」や「世界の調和」を追求していた。彼は晩年、禅や宗教思想に傾倒し、「碁は争いではなく調和を求めるもの」と語っている。黒と白が争うのではなく、互いに生かし合いながら最善の形を探る。その姿こそが宇宙の摂理であり、人間社会にも通じると考えていた。

現代において、この名言は新たな意味を持つ。AI囲碁の登場により、囲碁はかつてないほど複雑で深い世界として再認識されている。AlphaGoが示した「人間の常識を超えた手」は、まさに“宇宙的”な発想であり、呉清源棋士の思想と驚くほど一致している。多くのプロ棋士が「AIの碁は呉清源の思想に近い」と語るのは偶然ではない。

また、井山裕太棋士や張栩棋士、趙治勲棋士など現代のトップ棋士も、呉清源棋士の言葉を引用し、「囲碁は無限の世界であり、学び続ける価値がある」と述べている。特に張栩棋士は「呉先生の碁は、宇宙のように広く深い」と語り、彼の棋譜研究を続けている。

総じて、「碁は宇宙だ」という名言は、囲碁の奥深さを象徴するだけでなく、呉清源棋士という人物の人生観、哲学、そして世界観を凝縮した言葉である。囲碁を単なる勝負事ではなく、宇宙の摂理を映す芸術として捉えた彼の思想は、今なお多くの棋士に影響を与え続けている。

新たな年も早くも六月となり、夏と変わらない日差しと、台風の接近と共に梅雨の訪れを早くも感じてしまう、陽気の今日この頃ですが、皆さんはどの様にお過ごしでしょうか?

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