大学4年のとき、
住んでいたアパートの目の前にある家の
家庭教師をすることになった。

相手は、小学校6年生の男の子。
父親は大学病院の先生。

中学生のお兄さんがいて、
これがとても勉強ができるらしい。

今まで、父親が勉強を教えていたのだが、
すぐに喧嘩になるらしく、
家庭教師を雇うことにしたそうだ。

両親も、勉強のできる長男を
ほめてばかりいるので、
反発しているのだろう。

勉強を教え始めると、
まず、遊びたがる。

集中して勉強してくれない。

家に誰もいないときは、
遊びから始まる。

遊びは嫌いじゃないので、
最初の5分くらいはつきあうが、
さすがにお金を頂いているので、
勉強を教えないわけにはいかない。

ただ、教えると、物分りはすごくいい。
とても賢い子だ。
本気で勉強すれば、
お兄ちゃん以上かもしれない。

将来なりたいものを聞くと
医者になりたいとのこと。

理由はどうであれ、目標があるのはすばらしい。

1ヶ月くらいたった、ある日、
家に誰もいなく、また遊びから始まる。

5分くらいたって、
勉強を促す。

いつものように、ダダをこねる。

「どうして、そんなに勉強したくないの?」

と聞いてみた。

すると、想像通り、兄さんと比較されることや、
親への不満が理由だった。
簡単にいうと、いじけていただけ。

「でもさ、医者になりたんでしょ?
 医者は勉強ができないと、なれないよ。
 親に反発するのは勝手だけど、損するのは自分だよ。」

そう言うと、
一瞬、間があり、


「そうだね!!」


と、何か吹っ切れた明るい顔で、そう答えた。


それには、こっちが驚いた。

この素直さ、
(この子はスゴイ)と思った。

普通の子は、
目先の感情だけで、
自分の将来の損得を考えることはできないものだ。


それからは、遊ぶことなく勉強するようになった。

小学生に、方程式も教えた。
すぐに理解した。

やっぱり、頭が良かった。


成長するには、素直であることが大切。

素直な人には、協力してあげたくなる。

そうすると、自分の能力だけでなく、
協力者の能力もプラスされるので、
実力が2倍にも10倍にもなったりする。

勉強の出来、不出来は関係ない。


わたしが、
部下によく言い聞かせていたことのひとつが
素直であること。

素直だと周りの人に好かれ、
困ったときも協力してくれる。


他人に理解してもらえないと人間関係で悩んでいる人は
まず、自分が素直になることだ。

そうすれば、簡単に解決する。


そう言ってる自分だが、
歳をとるにつれ素直でいることが、
できなくなってしまうことがある。

そんなとき、
当時の彼の顔が思い浮かぶ。

おかげですぐに反省できる。

感謝