ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介して政府機関などの機密情報の流出が相次いでいる問題で、政府は15日、流出の危険性をホームページで注意喚起し、所管官庁へも再発防止を求めるなどの対策を発表した。ただ、一連の対策は決め手を欠き、抜本的な解決の道は見えないまま。安倍官房長官は記者会見で「最も確実な対策はパソコンでウィニーを使わないこと」と異例の使用自粛を国民に呼びかけた。
「やっぱり注意してもらわないとね。その危険性があるなら、使わない方がいいでしょう」。小泉首相は15日夜、首相官邸で記者団にこう語った。首相が特定のソフトウエアについて使用自粛を求めるのは異例だ。
内閣官房情報セキュリティーセンターの山口英補佐官(奈良先端科学技術大学院大学教授)は「乱暴だと言われるのは覚悟の上」と話す。
それほど、政府は追いつめられている。
政府機関の機密情報の流出は今年に入って加速している。2月下旬、海上自衛隊の秘密情報がネット上に漏れた事態を重くみた首相が、安倍長官に対策づくりを指示。長官は今月9日の事務次官会議に出席し、私有パソコンからの内部情報流出について「誠に憂慮すべき事態」と指摘して情報管理の徹底を求めていた。
一連の漏洩(ろうえい)の原因はウィニーの入った私用パソコンで無防備に仕事をするなど「基本的なヒューマンエラーが大きい」と同センターのひとりは指摘する。海自の内部資料も、隊員の私有パソコンからウィニーを通じて流出したとされる。
このため、各省庁は私有パソコンの管理強化に乗り出している。
防衛庁は資料流出が発覚した直後の2月下旬、緊急対策として(1)私有パソコンに入っているウィニーなどのファイル交換ソフトの削除(2)私有パソコンに入っている秘密情報の削除――を全職員に指示した。額賀防衛庁長官も8日、自衛隊員が職場で使っている私有パソコンをなくそうと、官費で購入する方針も明らかにした。
ただ、自宅の私有パソコンで仕事をするケースがゼロになるわけではない。例えば、外務省も省内パソコンの外部持ち出しを原則禁じているが、出張用パソコンは借りることができる。外務省関係者は「海外出張などでは私用のパソコンを持ち出すことも全く禁じられているわけではない」と説明する。
一方、首相や安倍官房長官がウィニーの使用自粛を国民に呼びかけたことには反発も出ている。流出はウィニー自体ではなく、ファイル交換の過程で介在するウイルスが問題だからだ。
中京大の鈴木常彦・助教授(情報技術)は「ウィニーに全責任を負わせても根本的な問題解決にはならない。政府はネット社会のリテラシー(活用能力)教育が教育現場でなされていない現状を直視し、充実させるきっかけにすべきだ」と話す。
内閣官房は15日夜になって「ウィニーというソフトがそもそも問題だから使うべきではないとしたものではありません」と弁明するコメントを発表した。